日本赤十字社 水戸赤十字病院

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第36回は、藤沢 言語聴覚士に「摂食嚥下障害」についてインタビューしました。

第36回
摂食嚥下障害について
藤沢 言語聴覚士

Q 言語聴覚士とはどのようなお仕事ですか。

話す、聴く、食べるなど機能に関するリハビリテーションを行う専門職です。対象は小さなお子さまから高齢の方まで幅広く、言語・聴覚・発声・発音・認知・摂食嚥下などの機能が低下した方に対して、機能回復を目指すための支援を行っています。
今回は、その中でも「摂食嚥下障害」についてご説明いたします。

Q 摂食嚥下障害とは何ですか?

摂食嚥下障害とは、食べることや飲み込むことがうまくいかなくなる状態をいいます。私たちは食事の際、食べ物を口に入れて噛み砕き、唾液と混ぜひとつの塊(食塊)を作ります。これを舌の力で喉へ送り込み、「ごっくん」と飲み込むときに、喉頭蓋という蓋の役割を持つ器官が、気管の入口を塞いで誤嚥を防ぎ、食塊が食道から胃へと進むように働きます。この一連の動作が摂食嚥下です。
この過程のいずれかに障害が生じると、窒息や食物が誤って気管に入る誤嚥によって、肺炎を引き起こすことがあります。誤嚥は、脳血管疾患、神経筋疾患、頭頸部癌などの病気が原因となるほか、加齢による機能低下でも起こりやすくなります。
肺炎や誤嚥性肺炎が命に関わることも多く、高齢化が急速に進む中で、摂食嚥下障害に対する理解や予防の重要性は高まっています。

Q 加齢によってどのような変化が起こるのでしょうか。

高齢になると、歯を失ったり唾液の量が減ったりするほか、舌や喉の感覚・筋力が弱くなるといった身体の変化がみられます。噛む力や飲み込む力が低下すると、むせやすくなったり、食べ物が喉につかえやすくなることがあります。また、食事量が減ることで気付かないうちに低栄養状態が進行している場合もあり、高齢の方で体重が減ってきたら注意が必要です。
さらに、味覚が低下すると濃い味を好む傾向がみられ、喉の渇きを感じにくくなることで、水分摂取量が減り脱水を起こしやすくなります。こうした変化には個人差がありますが、今の嚥下機能を維持し、いつまでも食事を楽しむには、日々の継続的なトレーニングが必要です。

Q 自分で行えるチェック方法はありますか。

摂食嚥下障害が疑われるかどうかをチェックする方法があります。
以下の10項目の質問に対し、それぞれ「0:思わない、1:めったに思わない、2:時々思う、3:よく思う、4:常に思う」の中から、もっとも近いものを選び、点数を合計します。
皆さんもぜひチェックしてみてください。

  1. この3か月の間に飲み込みの問題が原因で体重が減少した
  2. この3カ月の間に飲み込みの問題が原因で外食したくないと思ったことがある
  3. 液体を飲み込むときに通常以上の力が必要だ
  4. 固形物を飲み込むときに通常以上の力が必要だ
  5. 錠剤を飲み込むときに通常以上の力が必要だ
  6. 飲み込むことが苦痛だ
  7. 飲み込みにくさにより、食べる楽しさが損なわれている
  8. 飲み込むときに、食べ物が喉にひっかかる感じがする
  9. 食事中に咳が出る
  10. 飲み込むこと自体にストレスを感じる

以上で質問は終わりです。
この合計点数が3点以上である場合は、嚥下障害が疑われます。気になる症状がある場合には、早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。

Q 加齢に伴う摂食嚥下機能の低下を予防するために、自宅でできる簡単なトレーニングはありますか。

自宅でできる簡単なトレーニングとして「口腔体操」があります。口の周囲の筋肉に、適切な負荷をかけることで、噛む力や飲み込む力の維持に役立ちます。無理をせず、ご自身の状態や体力に応じてできる範囲からから始めてみましょう。

  1. 唇の体操
    口をすぼめて「うー」と発音し、その後「いー」と横に大きく引きます。ゆっくり交互に繰り返します。
  2. 舌の体操
    舌をまっすぐ前に伸びるところまで出し、その後引っ込めるという前後運動を繰り返します。
    続いて舌を右・左、さらに上・下へと順に動かしていきます。各方向ゆっくり10回ずつ行いましょう。
    また、舌で唇を左回り、右回りになめる運動も効果的です。なるべく途中で途切れないように意識して行ってください。
  3. 頬の体操
    息を吸って頬を膨らませ、次にすぼめるといった動きをゆっくり5回繰り返します。

ほかにも滑舌を良くする運動では、パタカラ運動がよく知られています。「ぱ、た、か、ら」の音を、ぱぱぱぱぱ、たたたたた、かかかかか、らららららのように繰り返し発音します。 また早口言葉の音読や新聞の音読、歌を歌うことも良いトレーニングになります。 これらの運動は唾液の分泌が促すため、食事の前に行うと良いでしょう。

Q 最後に、水戸赤十字病院での取組について教えてください。

言語聴覚士による支援だけではなく、医師や摂食嚥下認定看護師、薬剤師、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士など、多職種で構成された摂食嚥下チームが連携し、患者さま一人ひとりに合わせた対応をしています。
また、栄養サポートチームとも協力し、患者さまの栄養評価を行いながら、経口摂取以外の栄養管理についても支援しています。
今回の摂食嚥下障害について少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。

当記事は、令和5年9月29日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。