日本赤十字社 水戸赤十字病院

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医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第35回は、相差 薬剤師に「授乳とくすり」についてインタビューしました。

第35回
授乳とくすりについて
相差 薬剤師

Q 今回のテーマは「授乳とくすり」ですが、そもそも、母乳とはどういうものなのでしょうか。

母乳は、約90%が水分で、他にタンパク質・脂肪・糖質・ミネラル・ビタミン類などが含まれています。母乳と人工乳は、エネルギー量はほぼ同等ですが、タンパク質・ミネラルなどの組成・含有量に若干の違いがあります。
また、母乳には感染から赤ちゃんを守る成分が含まれていますが、アレルギーの原因となる物質は含まれていません。さらに、母乳の栄養成分は出産後の経過に合わせて自然に変化していきます。出産直後は、タンパク質・ミネラル分・抗体を多く含み、出産後1~2週間ほど経つと、脂肪や糖質がより多く含まれるようになります。

Q 薬を飲んだら、授乳してはいけないのでしょうか。

多くのお薬は母乳に移行しますが、その量は非常に少なく、赤ちゃんに影響する可能性は低いことが分かっています。お薬を服用している場合でも、基本的には母乳をあげることができます。

Q 母乳をあげているお母さんが飲んではいけない薬はありますか。

一部のお薬は、母乳育児中は使用を控える必要があります。具体的には、不整脈の治療に用いられる一部の薬剤、麻薬、治療目的に使用する放射性ヨウ素、抗悪性腫瘍薬などが挙げられます。ただ、こちらは常に新しい情報が追加されているので、かかりつけ医療機関でご相談ください。

Q 湿布薬や軟膏は使用できますか。

湿布薬や軟膏などの外用薬は、薬が母乳へ移行する量はごくわずかです。赤ちゃんに影響が及ぶ可能性は低いとされています。ただし乳腺炎などで乳頭や乳頭周囲に軟膏を使用する場合は、授乳の際に赤ちゃんの口に入らないよう、ガーゼなどで拭き取ってから授乳してください。

Q ヨウ素系のうがい薬は使用しても大丈夫でしょうか。

ポビドンヨードなどのヨウ素系うがい薬の使用には注意が必要です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原料となる成分で、海藻類などの食品にも含まれています。しかし、過剰に摂取すると赤ちゃんの甲状腺機能に影響を及ぼす可能性があります。お母さんが摂取したヨウ素は母乳の中で濃縮されやすいため、ポビドンヨードを含むうがい薬を長期・頻回に使用することはおすすめできません。

Q サプリメントについてはどうですか。

サプリメントとは本来、「不足分を補うもの」という意味です。ビタミン・ミネラルに関しては、過剰摂取にならなければ基本的に問題ないとされています。
一方で、ハーブ類のサプリメントは一部に母乳分泌抑制作用や、赤ちゃんへの影響がある可能性のものがあり、安全性を考え慎重に選択した方がよいでしょう。また、サプリメント全般にいえることですが、有効性や安全性、薬との相互作用などについて科学的な根拠が不十分なものも多くあります。そのため、必要な栄養素は日々の食事からバランスよく摂ることがよいでしょう。

Q 母乳をあげているお母さんが注意すべき嗜好品にはどのようなものがありますか。

注意が必要な嗜好品には、カフェイン、タバコ、アルコールなどがあります。

カフェイン

授乳中のお母さんがカフェインを摂取すると、その約1%程度が母乳へ移行するとされています。摂取量が多い場合、赤ちゃんに神経過敏や不眠などがみられることが報告されています。コーヒー、お茶、カフェイン含有量の多いソフトドリンクやダークチョコレートなどは、一般的な食習慣の範囲の量にとどめましょう。
また、母乳をあげる直前にカフェインを摂取すると、母乳中に含まれる可能性が高まるため、摂取のタイミングを授乳直後にするなど工夫してみましょう。

タバコ

タバコのニコチンも母乳に移行します。喫煙により母乳分泌が減少することや、赤ちゃんに下痢・嘔吐・哺乳量の低下・不眠などが起こる可能性が指摘されています。
また、受動喫煙により、赤ちゃんの健康や成長に悪影響を及ぼすことも指摘されています。妊娠中から授乳期間を通して禁煙することをおすすめします。

アルコール

アルコールは急速に母乳へ移行します。また、飲酒は母乳分泌を減少させます。やむを得ず飲酒する場合は少量に留め、飲酒後2~3時間以上空けてから授乳するようにしましょう。ただし、アルコール度数の高いものを摂取したり、継続的な飲酒や大量の飲酒をした場合は、授乳を控えてください。

Q 新型コロナウイルスワクチン接種は授乳に影響しますか。

新型コロナウイルスワクチンに使用されるmRNAワクチン自体が、母乳に移行する可能性は非常に低いとされています。また、授乳中のお母さんがワクチン接種を受けても、赤ちゃんへの悪影響は報告されていません。
そのため、授乳中でも新型コロナウイルスワクチンの接種は問題ないと考えられています。

Q 最後にメッセージをお願いします。

以前は「薬を飲むと、母乳をあげられない」、「お母さんが薬を我慢しなければならない」と思われていました。しかし現在は、お母さんの体調を考慮し、適切にお薬を使用しながら母乳育児を続けていくことができます。
水戸赤十字病院では医師・助産師・看護師・薬剤師が連携し、ひとり一人の状況に合わせたサポートを行っています。
私たちはこれからも、患者さまに寄り添った医療を提供し、地域に愛され、信頼される病院を目指していきます。

当記事は、令和5年9月8日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。