医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに
医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第34回は、笹田 診療放射線技師に「大腸CT検査」についてインタビューしました。

Q 今回のテーマである「大腸CT検査」とはどのような検査でしょうか?

CTコロノグラフィーと呼ばれる、大腸の検査方法のひとつです。大腸の検査には、このほかに内視鏡検査や注腸造影検査があります。
大腸CT検査では、大腸に炭酸ガスを入れて腸を膨らませた状態で撮影を行います。撮影した画像をコンピューターで解析することで、大腸癌やポリープ、大腸憩室という大腸のくぼみなどのさまざまな病気を調べることができます。
Q 大腸を検査するときは下剤を飲むイメージがありますが、この検査も下剤を飲む必要がありますか?
はい。大腸CT検査では、腸の中をできるだけきれいな状態にして撮影することが重要です。そのため、検査前日は検査食、もしくはおかゆやうどんなどの消化の良い食事をとっていただき、夜に下剤を服用していただきます。検査当日も下剤を服用し、排便して腸内をきれいにします。
Q 検査食とはどのようなものですか?
検査食とは、検査を受ける人のために開発された、消化の良い食事セットのことです。
例えば、たまごがゆやスープカレー、豆腐ハンバーグなどのメニューがあります。
Q 検査時間はどのくらいですか?
検査時間は約15分程度です。まず、検査着に着替えていただきます。その後、腸の 動きを和らげる薬を肩に注射します。次に、検査台に横になり、小指より細くやわらかいチューブを肛門に挿入し、専用の機械で炭酸ガスを注入して大腸を少しずつ広げていきます。ガスが十分に入ったら、うつ伏せと仰向けの体勢でCT撮影を行い、検査は終了です。
なお、うつ伏せや仰向けの姿勢が難しい場合は、担当技師にお申し出ください。個別に対応させていただきます。
Q 注射をして腸の動きを和らげるとありましたが、詳しく教えてください。
腸は「ぜんどう運動」という、便を送り出すための収縮運動を行っています。検査前にこの動きを和らげる(動きを弱める)ことで、炭酸ガスが入りやすくなります。
この検査で用いる炭酸ガスは腸の壁から速やかに吸収される性質があり、検査終了後にはほとんど残りません。検査後に長時間腸の中に溜まったり、おならが止まらなくなったりすることはありません。
Q 撮影後のコンピューター解析とはどのようなことをするのですか?
CTで撮影した画像データをもとに、大腸内部の画像を作成します。
内視鏡検査で腸の内側を観察しているように見える「仮想内視鏡像」を作成することで、粘膜の隆起したポリープや憩室などを詳しく観察することができます。
また、大腸を広げて表示する「展開像」や、大腸の全体像が分かる「仮想注腸像」も作成し、病変の有無や位置を評価します。
Q ほかの大腸検査についても教えてください。
大腸検査には、ほかに大腸内視鏡検査と注腸造影検査があります。
- 内視鏡検査
おしりから内視鏡(細いカメラの付いた管)を腸の奥まで挿入し、大腸の中を直接観察できる検査です。カメラで直接大腸の中をみることができ、ポリープなどの病気が見つかった場合は、同時に組織検査や治療を行うことも可能です。 - 注腸造影検査
おしりからバリウム(造影剤)と空気を注入し、X線を用いて大腸の形などを調べる検査です。造影剤が腸の内側にしっかり付着することで大腸の形状や異常の有無を把握できます。
Q ほかの検査と比べて、大腸CT検査にはどのような長所がありますか?
大腸CT検査には、以下のような長所があります。
- 下剤の量が比較的少ない
内視鏡検査と比べると、腸をきれいにするための下剤の量が少なく、体への負担が軽くすみます。 - 検査中の痛みがほとんどない
自然に体に吸収される炭酸ガスを大腸に入れてふくらませる方法のため、痛みが出にくいのが特徴です。 - 検査時間が短く、検査が終わった後もすぐに普段の生活に戻れる
検査自体は約15分程度で終了します。検査後も大きな制限がないため、通常の生活にすぐに戻ることができます。 - 大腸だけでなく、腹部全体の異常が見つかることがある CT撮影では大腸以外の腹部臓器も映るため、予期していなかった別の病気が見つかる場合もあります。
Q それでは逆に、短所はありますか?
はい、いくつか注意点があります。
CT撮影のため、わずかですが放射線被ばくがあることです。そのため妊娠中の方や妊娠の可能性がある方は検査を受けられません。
そして、カメラで直接観察できる内視鏡検査に比べ、小さい病気は見つけにくく、病気が見付かっても、同時に治療することができないのが短所です。
Q 最後に、大腸CT検査は、どのような方におすすめですか。

大腸CT検査は、健康診断で便潜血陽性を指摘された方や過去に大腸内視鏡検査や注腸検査で痛みが強いなどのつらい経験をされた方に特におすすめです。
また、下痢や便秘が続くなど、おなかの症状に不安がある方にもおすすめです。
厚生労働省の報告では、日本人のがんの中で大腸がんは男女ともに罹患数が2番目に多いとされています。早期発見、早期治療が大切ですので、ぜひ大腸CT検査をお気軽に受けていただきたいと思います。
当記事は、令和5年8月25日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。