日本赤十字社 水戸赤十字病院

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第33回は、救急科 長田医師に「もし避難所で生活することになったら~健康管理の注意点~」についてインタビューしました。

第33回
もし避難所で生活することになったら
~健康管理の注意点~
救急科 長田医師

Q 災害が起きて避難所で生活することになった場合、注意すべきことはありますか?

避難所で特に注意が必要なのは「感染症の流行」です。避難所での集団生活では、下痢などの消化器系感染症や、風邪・インフルエンザといった呼吸器系感染症が広がりやすくなります。こまめな手洗い・うがいを心がけましょう。
発熱や咳などの症状がある場合は、軽い症状でもマスクを着用し、周囲に感染を広げないようにしましょう。咳などの症状が長引くときには結核などの可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
また、下痢の症状がある場合は脱水に注意し、水分補給をしっかり行うことが大切です。

Q 寒い季節に注意すべき健康トラブルはありますか?

寒い季節に注意したいのは「低体温症」です。低体温症は、体の熱が十分に作れない、あるいは熱が奪われやすい状態で起こります。お年寄りや子どもがなりやすく、手足の冷えや震えが初期症状です。
震えが始まった場合は、地面に敷物を敷く、風を防ぐ、濡れた服を脱ぐ、毛布などで体を包むなどして体温を保ちましょう。なるべく厚着をし、特に顔・首・頭は熱が逃げやすいので帽子やマフラーで保温してください。また、栄養や水分をしっかり補給することも重要です。
会話がかみ合わない、ふらつく、震えが止まらないまま意識がもうろうとするなどの症状が見られたら、早急に受診が必要です。

Q 反対に、暑い季節に注意すべき健康トラブルはありますか?

暑い季節は「熱中症」に注意しましょう。できるだけ換気を行い、日差しを避ける工夫が必要です。特に乳幼児や高齢者は脱水になりやすく、熱中症のリスクが高まるめ、こまめな水分補給が欠かせません。
喉の渇き、めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、頭痛、吐き気、疲労感などは熱中症の兆候かもしれません。さらに重症になると、汗が止まり皮膚が乾燥し、意識がもうろうとすることもあります。急に重症化することもあるので、体を冷やし、早めに医療機関を受診しましょう。
また、気温が高い時期は「食中毒」にも注意が必要です。避難所で配られた食品はなるべく早めに食べ、手洗いを徹底しましょう。水が不足している場合は、ウェットティッシュなどを活用し、できる範囲で清潔を保ちましょう。

Q その他に注意すべきことはありますか?

避難所生活で起こりやすいのが「エコノミークラス症候群」です。
狭い場所で長時間座ったまま過ごしたり、水分や食事を十分にとらない状態が続くと血行が悪くなり、血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が足から肺などへ運ばれ、血管を詰まらせる恐れがあります。この症状を「エコノミークラス症候群」と呼んでおり、予防のためには、定期的に体を動かし、十分な水分をとることが大切です。
ただし、アルコールは利尿作用があり、摂取した以上に水分が尿となって排出されてしまうため、控えるようにしましょう。ゆったりした服装も血行促進に効果的です。 また、胸の痛み、片足の腫れ・痛み・赤みなどの症状がある場合は、早めに受診してください。

Q お年寄りや子どもなど、年代に応じた注意点はありますか?

まず、お年寄りに対する注意点です。
繰り返しになりますが「脱水症状の予防」がとても重要です。高齢者は、若い方に比べて、のどの渇きを自覚しにくい傾向があります。そのため、意識してこまめな水分補給を心がけましょう。
また、持病のある方は「お薬手帳」を持参しておくと、避難先での診察や服薬管理に役立ちます。

そして子どもに対する注意点です。
子どもの生活環境を把握し、生活リズムを整え、子ども同士が安全に遊べる場所や時間を確保し、子どもらしい日常生活が送れるようにしてあげることが大切です。また、子どもに話しかけたり、抱きしめるなど、スキンシップをとって安心感を持たせてあげるように働きかけましょう。また、十分な睡眠がとれるように周囲の環境を整えてあげることも大切です。

Q 最後にもう一言アドバイスをお願いします。

避難所という慣れない環境では、心身に大きなストレスがかかります。これらを和らげる方法として、「6秒でゆっくり息を吐き、6秒で吸う」呼吸法を、朝晩5分ずつ行うのも効果的です。
それでも「不安で眠れない」「イライラする」「動悸がする」などの症状がある場合は、無理をせずに、身近な人や専門の相談員に話をしてみましょう。
心の健康を保つことが、避難所生活で何より大切です。

当記事は、令和5年8月4日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。