日本赤十字社 水戸赤十字病院

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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第32回は、宮永 調理師に「お産を増やそうプロジェクトにおける食事の改善」についてインタビューしました。

第32回
お産を増やそうプロジェクトに
おける食事の改善
宮永 調理師

Q 宮永さんは病院で働く調理師として、主にどのような食事を担当されているのですか?

入院患者さまの食事を調理しています。入院中の患者さまは、さまざまな疾患で入院していますので、管理栄養士の指示のもと、治療に適した食事を調理しています。

Q 治療食にはどのような物がありますか?

全粥食・塩分コントロール食・糖尿病食・透析食・腎不全食など患者さまの病状に合わせ、さまざまな食事を提供しています。管理栄養士が作成した献立表に基づき、調理師が丁寧に調理しています。限られた食材や調味料の中で、より美味しくできるよう工夫しています。 また、調理師全員が患者さまに美味しい食事を提供できるよう、日々調理技術の向上に努めています。

Q 今回のテーマ「お産を増やそうプロジェクトにおける食事の改善」について教えてください。

2019年に、当院の分娩件数を増やすために「お産を増やそうプロジェクト」が立ち上がり、その取組の一つとして、出産時に提供する食事(産科食)の質の向上が掲げられました。
これを受け、栄養課では調理技術の向上を目指し、外部業者による出張コンサルテーションを導入しました。
導入期間は2020年の1月~4月の3か月間。
コンサルティング会社と契約し、週2日(1泊2日)、計13週間にわたりシェフ1名が来院し、産科食全般、お祝い膳、手作りおやつなどの、調理や盛り付けについて、専門的な指導を受けました。

Q お祝い膳とは、出産のお祝いに提供する特別な食事のことでしょうか?

はい。お祝い膳は、お子さんをご出産されてから退院するまでの間に提供する特別な食事です。 当院でのメイン料理は「牛肉ステーキ・ソースシャスール」です。お肉はブロックの状態で仕入れ、栄養課で丁寧に切り分けています。ソースもすべて手作りで、当院自慢の味です。
以前、伊勢海老を使用したメニューも検討しましたが、原材料費や甲殻類アレルギーなどを考慮し、牛肉料理の1種類に統一しています。
ほかにも、海の幸マリネのオードブル、彩りサラダ、デザートのガトーショコラフルーツ盛り合わせをご用意しています。デザートのガトーショコラも、もちろん栄養課スタッフによる手作りです。

Q 産科食とは、どのような食事内容ですか?

一般患者さまと同じ内容の食事ではありますが、産科食では数種類の付け合わせ野菜や香辛料、紙かいしきなどを添え、専用の食器でより華やかに盛り付けて提供しています。
お料理の味はもちろん重要ですが、五感、特に“見た目の印象“が食事の満足度に大きく影響します。
そのため、すべてのメニューに赤色・黄色・緑色などの「3色」をバランスよく取り入れた彩りを心がけ、視覚からも楽しんでいただける食事づくりを行っています。

Q 手作りおやつは、具体的にどのようなメニューがありますか?

当院では、“体にやさしいおやつ”をコンセプトに、手作りおやつを日替わりで7種類ご用意しています。

〈手作りおやつ7種〉
  • おからスコーン
  • キャロットカップケーキ
  • さつまいも饅頭
  • バナナマフィン
  • おからクッキー
  • クラフティー
  • 黒豆蒸しパン

日赤マスコットのハートラちゃんシールを貼った袋にラッピングして、飲み物・メッセージカードと一緒にお届けしています。
なかでも私のおすすめはおからクッキーです。ハート形に型抜きし焼き上げており、とってもおいしい仕上がりになっています。

Q  コンサルティング会社の指導を受ける中で、特に大変だったことはありますか?

コンサルティング会社のシェフから直接指導を受けたのは、調理師は私を含めた2名でした。
そのため、教わったレシピや調理・盛り付けの方法をその他の調理スタッフへ共有することが特に大変でした。
そこで、指導内容を確実に伝えられるよう、調理レシピや献立の工程表を作成し、盛り付け例の写真をファイリングして共有できる仕組みを整えました。 特にお祝い膳に関しては、個別に丁寧な指導を行いました。 現在は、作成した工程表に沿って下処理・調理・盛り付けを行うことで、どの調理師が担当しても患者さまにご満足いただける食事を提供できる体制が整っています。

Q 以前と比べ産科食・お祝い膳の評判はいかがでしたか?

コンサルティングをお願いする前と後で嗜好調査を実施しました。
その結果、産科食・お祝い膳ともに、味付け・盛り付け・量・食器や見た目・食事の温度・軽食(おやつ)のすべてにおいて、コンサルティング前よりも評価が上がりました。
患者さまによりご満足のいただける食事を提供できるようになりました。

Q コンサルティング以外にも工夫されたことはありますか?

取組として、産婦人科からの要望を受けて、陣痛時の妊婦さんでも食べやすい形態の食事を考案しました。おにぎりをラッピングし、一口大のおかずをオードブルスプーンに盛り付けることで、陣痛の合間でもく食べやすいように工夫しました。今後も栄養士と協力し、産婦人科だけでなく、さまざまな診療科の要望に応じて、より良い食事内容の提供に努めてまいります。

当記事は、令和5年8月18日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。