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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第5回は、朝倉 診療放射線技師に「マンモグラフィ トモシンセシス」についてインタビューしました。

Q 朝倉さんは、診療放射線技師ということですが、具体的にどのようなお仕事をされているのですか?

はい。私は、主にX線検査や胃のバリウム検査などを行うX線透視検査を担当しています。そのX線検査の中でも、マンモグラフィと呼ばれる乳房専用のX線検査も担当しています。
触っても「しこり」が分からない初期の乳がんは、石灰化と呼ばれるカルシウムの沈着を伴うことがあります。マンモグラフィは、この石灰化を見つけることに特に有用で、乳がんの早期発見につながる検査です。
実際には、乳房を圧迫板と呼ばれる透明な板で直接挟んで、薄く延ばした状態にして撮影します。通常は斜め方向と上下方向から、左右の乳房を別々に行うので計4回の撮影をします。圧迫する時間は片方の乳房につき数秒から10秒程度で、撮影のときは息を止めていただきます。検査全体としては15分程度で終わります。
直接乳房に手で触れるため、当院で行うマンモグラフィは全て女性技師が担当しています。

Q 検査担当が女性技師なのは安心します。では乳房検査における「トモシンセシス」とは、どのような検査ですか

まずトモシンセシスという言葉は、「断層撮影」と「合成」の2つの意味からつくられた造語で、マンモグラフィ検査における新しい撮影技術です。通常のマンモグラフィですとレントゲン検査と同様に、平面画像(2D)で写ります。つまり、厚みのあるものがすべて重なって1枚の画像として写ってきます。そうすると、しこりや石灰化も正常な組織に重なって写ってしまい、見落としたり、病変全容が見えにくくなることがあります。
一方で、トモシンセシスはCT画像のように乳房内を断面で見ることができる検査です。つまり全体を1枚の画像に写し出すのではなく、乳房をいくつかの層に分けて複数枚写し出すので、正常組織の重なりをある程度避けて観察することができる検査なのです。

Q 実際にトモシンセシスはどのように検査するのでしょうか?

検査自体は、従来のマンモグラフィ撮影と同様に乳房を挟み、X線を照射する方向を機械的に変化させることで、乳房の断層画像を取得できます。当院では、従来のマンモグラフィを撮影し、そのまま、続けてトモシンセシス撮影を行いますので、乳房を挟む回数は変わりません。しかし、圧迫時間が7秒程長くなってしまいます。

Q トモシンセシスのメリットとデメリットを教えてください。

トモシンセシスの一番のメリットは、乳房にできた「しこり」と言われる腫瘤の姿や形を鮮明に写し出すことができるので、良悪性の診断能力を上げられることです。特に、若い人に多い「高濃度乳腺」という正常乳腺が密にある方には、非常に効果的で、正常組織に重なる病変の見落としが低減されます。逆に、従来のマンモグラフィでは腫瘤の様に見えた場合でも、トモシンセシス撮影を行うことで、腫瘤ではなく通常乳腺の重なりであったと説明でき、無駄な追加検査を回避できる場合もあります。
デメリットは、マンモグラフィとトモシンセシスを併用するため、被ばく線量が多少増えてしまうことです。そして前述のとおり、圧迫時間が延びることです。被ばく線量に関しては、健康被害が心配されるほどの線量増加ではなく、適正に管理された線量内に収めておりますので心配はありません。圧迫時間に関しては1方向7秒程延びますので、圧迫による痛みの時間も延びてしまいます。検査時、どうしても痛みに耐えられない場合は、遠慮なく担当技師へお声掛けください。圧迫を緩める等、可能な範囲で対応させていただきます。

Q トモシンセシスを受けたい場合、どうすればいいのでしょうか?

当院でのトモシンセシスは、マンモグラフィと同様に医師が診察等により必要と判断した場合に行いますので、患者様の希望や都合などで行うことはできません。また、今のところ、トモシンセシス単独での検査はなく、マンモグラフィと併用にて検査が組まれます。施設によっては、人間ドックなどの検診でオプションにより選べるところもあります。

Q トモシンセシスを受ける時の注意事項などはありますか?

基本的にマンモグラフィの延長で行う検査ですので、マンモグラフィと同様です。ただ、撮影時間が長くなりますので、体を動かさないようにしていただきます。
妊婦さんは胎児へのX線被ばくを防ぐため検査を受けられません。他にペースメーカーを装着されている方やポートという医療機器の埋め込みをされている方は、乳房圧迫で位置がずれる恐れがあるため、受けられない場合があります。また、乳房を大きくする豊胸手術を受けている方も内容物を破損する可能性があるため注意が必要となります。必ず検査前に、担当医師または撮影技師にお申し出ください。
それ以外でもご不安な点などありましたら、お気兼ねなくご相談ください。安心して検査を受けていただけるよう対応させていただきます。

※トモシンセシスについては、広報誌「虹」44号で詳しくご紹介しています。

当記事は、令和6年11月8日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。