医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに
医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第2回は、乳腺外科の栗原俊明先生に「乳がん診療」についてインタビューしました。
Q 乳がんは女性には非常に身近な病気ですよね。著名な方が乳がんになったというニュースを耳にすることがあります。
国立がん研究センターの統計データをみると、2000年頃から乳がんは、女性のかかるがん第1位となっており、毎年新たに乳がんと診断されるかたは増え続けています。当院でも、毎年200人以上のかたが新たに乳がんと診断されています。 ただし、死亡率については第4位ですので、乳がんは、早く見つけてしっかり治療ができれば、治る可能性が高い病気であるといえます。
Q 私たちはがんと聞くとショックを受けたり、怖いイメージをもったりしますが、早く見つけることが大切なのですね。早く見つける、というのはやはり「がん検診に行く」ということになりますか?
もちろん、自覚症状がなくがん検診で乳がんが見つかれば、早期から治療を行うことができます。
ただし、乳がんは、ちょうど働き盛りだったり、子育てや介護で忙しい、40代から60代くらいでかかる方が多いので、つい忙しくて検診のタイミングをのがす場合もあると思います。ですので、ご自身の乳房にしこりがある場合や、痛みがあったり、いつもと違うと思ったら、自己判断せずに病院を受診してもらいたいです。
Q 大きな病院では、がん検診はやっていないイメージでしたが、水戸赤十字病院でも乳がん検診を受けられるのですね。
はい。市町村のクーポン券をお持ちであれば、事前に予約をとっていただき、月曜日と金曜日の15時半からお受けしています。詳しくは、当院ホームページをご覧ください。しこりがある、などの自覚症状がある方、検診で要精密検査となった方は、乳腺外来を受診してください。初めてかかる場合は、月曜日と火曜日に、乳腺外科外来で診察できます。
Q 大きな病院の乳腺外科を受診するのは緊張するのですが、最初はどのような流れになるのでしょうか?

まずは、問診や触診、超音波検査やマンモグラフィーを使って、患者さんの腫瘍がどこにあるのか、悪性かどうかを調べていきます。悪性を疑う時は、針を刺して組織を少し採取して検査をします。一般的には、こうした流れを初めての外来か2回目あたりまでに行っています。
患者さんは働き盛りの忙しい世代のかたが多いので、なるべくできる範囲の検査をまとめて行っています。
組織を診断した結果、がんであった場合は、MRI検査で、がんがある場所をより詳しく調べたり、CT検査でリンパ節転移や遠隔転移の状態を調べてから、がんの状態に合わせた治療の提案をします。
Q 治療は、具体的にどのように決まっていくのでしょうか?
手術が可能な患者さんであれば、がんができている一部を切除する「部分切除」か、乳腺を全部切除する「全切除」のどちらが適応になるかをお伝えし、患者さんの希望を伺います。また、乳がんは、がんのタイプによって、最適な治療がそれぞれ違うので、手術で採取したがんのタイプや進行度合いに応じて、ホルモン治療や抗がん剤、放射線治療を組み合わせて、再発を防ぐための治療を提案していきます。
Q なるほど、治療の種類がたくさんあって混乱してしまいます。

患者さんにとっては初めて知る内容で、インターネットなどで調べても、情報の量が多く、どの治療が自分にとって最適なのか、ご自身だけで決めづらいのは当然だと思います。水戸赤十字病院では、患者さまをサポートするために、乳がんの認定看護師をはじめ、抗がん剤や放射線治療、遺伝診療などについての専門のスタッフが、診察室の中と外の両方で相談に乗れるように、体制を整え、患者さま一人ひとりが、納得して、前向きに治療に臨めるようにしたいと考えています。
Q 最後に、水戸赤十字病院の乳腺外科で、今後の展望などがあれば教えてください。
まずは、佐藤名誉院長から受け継いだ患者さんをしっかり診療し、水戸とその近隣地域の乳がん診療に、力を尽くしていきたいと考えています。
また、今後は2023年12月から保険診療となった、早期乳がん治療のラジオ波焼灼療法の導入を検討しています。ラジオ波焼灼療法は、手術に比べて乳房の変形や傷跡が少なく、入院期間も短いため、患者さんの負担が少ない治療として注目されています。
当記事は、令和6年10月11日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。