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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第24回は、長谷川 認定遺伝カウンセラー®に「遺伝カウンセリング」についてインタビューしました。

第24回
遺伝カウンセリングってなに?
長谷川 認定遺伝カウンセラー®

Q 認定遺伝カウンセラー®とは、どのような仕事なのでしょうか?

認定遺伝カウンセラー®は、「遺伝の専門家」として、患者さまやご家族の思いや不安をお聞きし、今後の治療や検査について一緒に考え、サポートをする仕事です。医師や看護師、薬剤師と連携して、相談者を支えます。
特に、遺伝子の検査を受けるかどうか判断する際に、患者さまと関わることが多いです。患者さまのこれまでの経過や、現在悩んでいる内容などを伺いながら情報を整理し、ご自身で納得して決断できるように支援しています。遺伝子に関連する言葉は、初めて耳にする内容や専門用語が多いため、必要となる医学的な情報をわかりやすくお伝えするよう心がけています。主治医には聞きづらいことも、安心して相談できるよう、時間をかけてお話をうかがっています。

Q 水戸赤十字病院では、どのような場面で認定遺伝カウンセラー®が関わるのですか?

当院では、がんの患者さまや、出生前検査や妊娠を考えておられるご夫婦などを中心に、遺伝カウンセリングを行っています。なかでも、乳がん患者さまからの相談が多く、最近では「BRCA 遺伝子」を調べる検査の前後で、医師から依頼を受けて遺伝カウンセリングを行うことが増えています。

Q BRCA 遺伝子とはどのようなものですか?

BRCA遺伝子は、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)という体質の原因として知られており、この遺伝子に変化があると、乳がんや卵巣がん、膵がん、前立腺がん等になりやすいことが分かっています。
検査で遺伝子に変化が見つかった場合は、体質に合った治療薬や検診方法を提案したり、希望に応じて予防的に乳房や卵巣を切除する手術を行うことも可能です。当院は、がんと診断された患者さまに対して、これらの検査や治療に関わる施設基準を満たしており、保険診療で提供しております。

Q 乳がんと診断された場合、どのようなタイミングで遺伝子の検査を行うのでしょうか?

大きく分けて、以下の3つのタイミングで検査を行います。

  1. がんと診断されて、これから治療を始めるとき
  2. がんの治療が落ち着いて経過観察に入るとき
  3. がんが再発・進行し、薬の選択を考えるとき

たとえば、乳がんの手術を控えている患者さまにとって、乳房を部分的に切除(乳房部分切除)するのか、それとも乳房全体を切除(乳房全摘)するのかを選択することは大きな決断となります。その際に、遺伝子の検査を行う事で、手術の方法を判断する材料となります。手術後には、採取した組織を用いて再発リスクや抗がん剤の有効性を数値化する検査についてもご説明しています。いずれも保険診療で行うことができますが、対象となる方は限られるため、医師・看護師・遺伝カウンセラーが連携して必要な方にご案内しています。

Q がんが進行・再発した場合には、どのような遺伝子検査がありますか?

進行再発時には、治療薬の選択が重要になります。その際に、より効果的な薬を見つけるために行うのが「がん遺伝子パネル検査」です。
この検査は、2019年から保険適用となり、一度に数百個の遺伝子を調べることができます。がん医療の中でも非常に進歩の速い領域で、導入当初は2種類だけだった検査の選択肢が、2025年現在では6種類となりました。
当院では、医師から依頼を受けた、対象の患者さまに検査内容や適切な検査方法を提案し、希望があれば、実施可能な医療機関へ紹介しています。

Q  遺伝に関する相談は、どこで受けられますか?

当院の遺伝カウンセリング外来までお問い合わせください。

  • 若くしてがんになったけれど、遺伝性のがんなの?
  • 血縁者にがんが多いけれど、自分はがんになりやすい体質なの?
  • 遺伝性のがんと診断されたけど、具体的にどうすればいいの?
  • 妊娠や出産にまつわる遺伝子の検査について相談したい

など、遺伝に関するさまざまな悩みについてご相談いただけます。
また、出生前検査や着床前診断に関するご相談もお伺いしています。
受診を希望される方は、代表電話(✆029-221-5177)にて、「遺伝カウンセリング外来の予約を希望する」とお伝えください。患者さまにとって、納得のいく選択ができるように支援していきます。

当記事は、令和5年10月20日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに、一部令和7年の最新情報を加えて制作しています。