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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第14回は、塩谷 医学物理士(診療放射線技師)と土尻がん放射線療法看護認定看護師に「リニアック」についてインタビューしました。

第14回 リニアックについて
塩谷 医学物理士(診療放射線技師)
土尻 がん放射線看護認定看護師

Q 「リニアック」とはどのような意味で、どのようなものなのでしょうか。

(塩谷)リニアックとは日本語で直線加速器といい、高圧の電磁場で電子を加速し放射線を出す装置のことです。病院では主に放射線治療に使用される医療機器を指します。

Q  放射線治療とはどのような治療ですか。

(塩谷)放射線治療はがん治療の一つです。腫瘍を切除する手術治療、抗がん剤などで治療する薬物療法と並んで、「がんの3大治療」の一つとして位置づけられています。
放射線治療は、全身ではなく、がんのある部分に限って行う局所的な治療です。 がんの部分に放射線を照射し、臓器の形態や機能を温存したまま治療できることが放射線治療の大きな特徴です。また放射線を照射しているときは、痛みや熱を感じることはありませんので、身体への負担が少ない治療です。

Q 放射線治療の目的や主な治療部位を教えてください。

(塩谷)治療の目的は、大きく2つに分けられます。 1つは、がんの完治を目指す根治治療、もう1つはがんの影響による苦痛を和らげるための緩和治療です。
当院の根治治療は、乳がんや前立腺がん、子宮周囲を治療する婦人科系がん、直腸や食道など消化管の治療が主なものです。
一方、緩和治療では、転移性骨腫瘍による痛みを和らげるための治療を主に行っています。
どちらの場合も放射線治療単独で治療することもありますが、手術や薬物療法と併用して行うこともあります。
当院では、特に乳がんに対する治療が多く、手術により腫瘍を摘出したあと、温存した乳房に対して放射線を照射します。手術で取り切れなかった可能性のある目に見えないがんを根絶するためです。この治療により、乳がんの再発率を1/3に減らすことが証明されており、術後の標準的な治療として行っています。
また、特定の前立腺がんに対しては、放射線治療が手術療法とほぼ同等の治療成績となっています。臓器の機能を温存し、生活の質を保つ治療として、需要が増えています。 そして当院では2024年に、新しいリニアックを導入しました。新しいシステムにより、治療部位に対して、よりオーダーメイドで高精度な放射線治療が可能となりました。

Q 新しい治療装置で、どのような治療を行えますか。

(塩谷)放射線を正確に照射するためには、精密な位置合わせが必要です。
当院では新たに、体表面光学システムを導入しました。これは治療室内に設置されたカメラにより、患者さまをリアルタイムにモニターに映し出だし、0.1mm単位で動きをモニタリングできるシステムです。この装置により治療中、あらかじめ設定した範囲外に位置がずれた場合は、自動で放射線が停止します。そのため照射中の位置精度を数mm以内に保ち治療できるようになりました。
また、モニターには患者さまの初回治療位置が投影されるので、次回の治療時の位置合わせをする際は、投影された画像を目標に位置を照合しながら調整できるようになりました。これまでは、位置合わせの目安として、患者さんの皮膚に直接マーキングをしていましたが、このシステムを使うことにより、マーキングを減らすことが可能となりました。今後はマーカーレス化を実現できるよう取り組んでいます。
さらに、CT画像を取得できるシステムも搭載され、光学システムと併せて、3次元的な位置照合の精度も向上し、これまで以上により正確に治療部位へ放射線の照射が可能となり、周囲の正常組織にはより優しい治療ができるようになりました。

Q マーカーレスの治療にはどのようなメリットがありますか。

(土尻)放射線治療は皮膚を通して照射するため、治療部位や線量にもよりますが、皮膚炎が出現することが多いです。皮膚炎の予防には皮膚を清潔に保ち、保湿することが大切です。これまではマーキングが消えないように洗浄や保湿、軟膏を塗ることに制限がありましたが、そうした制限がなくなります。また、当院は乳腺の女性患者さまが多く、衣服から見えてしまうことや、皮膚に直接ペンで書かれることによる羞恥心を軽減させる効果があります。さらに、皮膚にマークがあるという見た目のストレスに配慮できることも大きなメリットであると思っています。

Q 放射線治療の流れを教えてください。

はじめに、医師が放射線治療について治療方法や目的、副作用などを説明します。看護師も同席し、患者さまが理解し、納得のうえで治療の選択が行えるようサポートします。
治療が決定したら、放射線技師および医学物理士がCTを撮影し、治療の準備を行います。治療は毎回同じ姿勢で行う必要があるため、できるだけ楽に同じ姿勢がとれるように、声をかけながら体勢を整えていきます 治療は早ければ診察した日から開始でき、治療時間は15~20分程度で、通院治療が可能です。 治療終了時は毎回看護師が、副作用や心配事がないか患者さまに確認し、日常生活の工夫やケアの方法などの情報提供を行い、安心して治療できるようサポートしています。 このように医師、看護師、放射線技師、医学物理士など多職種で連携し、患者さまに正確で安心な治療が提供できるようチームで取り組んでいます。

当記事は、令和7年1月10日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。