日本赤十字社 水戸赤十字病院

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第46回は、自宅でできる、がん治療中・治療後の筋力アップトレーニング
古田 理学療法士が解説する「無理なく続ける運動習慣」

がん治療中や治療後には、体力や筋力の低下を感じる方が少なくありません。
しかし、適切な運動を続けることで、筋力や体力の維持・回復が期待できます。
今回は、がん患者さまが安全に取り組めるトレーニングについて、理学療法士がお答えします。

第46回
無理なく続ける運動習慣
古田 理学療法士

Q がん治療中でも運動はした方が良いのでしょうか?

はい。体調に合わせて無理のない範囲で運動を行うことが大切です。
がん治療では、手術だけでなく化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療などによって体力や筋力が低下しやすくなります。そのため、治療前から体力づくりを行い、治療中も状態に応じて体を動かすことで、筋力や体力の維持につながります。

Q 治療の時期によって運動方法は変わりますか?

治療の段階ごとに運動内容を調整することが大切です。

  • 治療前
    手術や化学療法、放射線治療に備え、体力づくりや筋力維持を目的として運動を行います。
  • 治療中
    副作用の状況に応じて、ウォーキングやストレッチ、軽い筋力トレーニングを行います。貧血や倦怠感が強い場合には、無理をせず運動量を減らすことも重要です。
  • 治療後の回復期
    体調を見ながら徐々に運動量を増やし、筋力・体力の回復を目指します。普段のウォーキングの速度を少しあげたり、筋力トレーニングを取り入れたりすることがおすすめです。

Q 運動を行う際に気を付けることはありますか?

医師への相談と体調確認を最優先にしてください。
がんの種類や治療内容によって注意点は異なります。運動を始める前には、主治医に相談しましょう。また、次のような症状がある場合は運動を中止し、医療スタッフへ相談してください。

  • 発熱
  • 出血
  • 強い倦怠感
  • 貧血症状
  • めまい
  • 強い痛み
  • 手足のしびれなどの抹消神経障害
疲労や痛みを感じた場合は休息を優先し、体調に合わせて運動量を調整することが大切です。

Q どのくらいの強さで運動すればよいですか?

「少しきつい」と感じる程度が目安です。
一般的には脈拍数を目安に運動強度を設定することがありますが、がん治療中は貧血などの影響で心拍数が参考になりにくい場合があります。

そのため、
・少しきついと感じる程度
・翌日に疲れが残らない程度
を目安に行いましょう。

もし翌日まで疲れが残っている場合は、運動強度が高すぎる可能性があります。

Q 自分の筋肉量を簡単に確認する方法はありますか?

「指輪っかテスト」が参考になります。
両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない方のふくらはぎの最も太い部分を囲みます。

結果の目安は以下の通りです。
・囲めない:筋肉量は十分である可能性が高い
・ちょうど囲める:標準的
・隙間ができる:筋肉量が少ない可能性がある

ただし、足にむくみがある方は正確に評価できないため対象外となります。

Q なぜ下半身のトレーニングが重要なのですか?

人体の筋肉の約7割は下半身に集中しているといわれています。下半身を鍛えることで、歩行能力の維持や転倒予防、体力向上につながり、効率よく筋力アップを目指すことができます。

Q 自宅でできるおすすめトレーニングを教えてください。

まずは次の3種類から始めてみましょう。

●つま先立ち運動
ふくらはぎ(下腿三頭筋)を鍛える運動です。
・椅子や壁につかまって立つ
・かかとをゆっくり持ち上げる
・ゆっくり元に戻す
歩行能力の維持や血液循環の改善に役立ちます。

●スクワット
太ももの前側(大腿四頭筋)を鍛える運動です。
・足を肩幅程度に開く
・お尻を後ろへ引きながらゆっくり膝を曲げる
・深くしゃがみすぎない
立ち上がりや階段昇降など日常生活に必要な筋力強化につながります。

●足の横上げ運動
お尻の横側(中殿筋)を鍛える運動です。
・椅子や壁につかまり立つ
・片脚を横へゆっくり上げる
・ゆっくり戻す
バランス能力の向上や転倒予防に効果が期待できます。

Q どのくらいの回数を行えば良いですか?

まずは、5~10回程度から始めましょう。
運動習慣がない方は、1セット5~10回程度から開始し、体調を見ながら回数やセット数を調整してください。無理なく続けることが最も重要です。

Q 最後に患者さまへのメッセージをお願いします。

がん治療中・治療後の運動は、「頑張りすぎないこと」が大切です。
治療による体調の変化は人それぞれ異なります。周囲と比べる必要はありません。主治医や医療スタッフに相談しながら、ご自身の体調に合わせて安全に運動を続けましょう。毎日少しずつでも継続することが、筋力や体力の維持・回復につながります。

監修
水戸赤十字病院 リハビリテーション技術課
理学療法士
古田 英二郎