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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第26回は、鈴木 薬剤師に「漢方薬」についてインタビューしました。

第26回
漢方薬について
鈴木 薬剤師

Q 漢方薬とはどのようなお薬なのでしょうか。

漢方薬は、中国から伝わった薬の知識が、より日本人の体質などに合わせ独自に発展した日本固有のお薬です。2種類以上の生薬で構成されており、多いものだと10種類以上を含むものもあります。数千年という長い年月をかけ、さまざまな症状に対応した配合の漢方が生まれました。
漢方薬も病院で処方される薬とドラッグストアで購入できる市販薬があり、含まれる生薬成分の量が異なります。

Q 漢方薬の特徴について教えてください。

漢方薬は、病気を直接治すというより、乱れた体のバランスを整え、体質改善をはかり、自然治癒力を高めることで症状の予防や改善をめざします。

Q 漢方薬は副作用が少ないという印象を持つ方も多いと思いますがどうなのでしょうか。

自然由来の成分でつくられているため、副作用は確かに少ないですが、全くないわけではありませんので注意が必要です。

Q 効果についてはどうでしょうか?

漢方薬は複数の成分を含んでいるため、一つの漢方薬で複数の症状に効果を示すことがあります。たとえば、葛根湯(かっこんとう)という漢方薬は風邪薬としてよく知られていますが、その他に頭痛や肩こりなどに使用されます。
実は古典落語にも葛根湯が登場する噺(はなし)があります。

ある町医者が、頭が痛いと訴える患者に対し、「それじゃ葛根湯を飲みなさい」と言います。次にお腹が痛いという患者が来ると、また「葛根湯を飲みなさい」と言います。 さらに付き添いの人にも「あなたも葛根湯を飲みなさい」と言ったという話です。

一見すると、どのような症状にもとりあえず葛根湯を処方してしまう“ヤブ医者”のような話ですが、実はこれ、さまざまな症状に効く葛根湯の特性を知り尽くした“名医”だったのではないかとも言われています。面白いですよね。
このように、漢方薬は一石二鳥にも三鳥にもなりうる可能性があります。コストパフォーマンスが高い薬と言えます。

Q 漢方薬は効果が穏やかで効き始めるまでに時間がかかるというイメージがあります。

漢方薬は長く飲み続けないと効果が出ないと思われがちですが、なかには即効性のあるものもあります。
先ほどの葛根湯もその一つです。
たとえば、こむら返りなど足がつった時に芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を服用すると、数分で効果が現れます。
とはいえ、全体的にイメージどおり、穏やかに作用するものが多いです。

Q  穏やかに作用するものが多いので、安心して服用できるのも漢方薬の魅力ですね。

ただし基本的には、その人の体質に合わせて使い分けられます。同じような症状でも、体質やその時の身体の状態によって、漢方薬の効果は変わります。
体に合わない漢方薬を服用すると効果が現れないでけでなく、胃もたれなどの副作用が起こることもあります。

Q  漢方薬を服用する際の注意点を教えてください。

基本的には、漢方薬は食前または空腹時に服用するのがよいとされています。ただし、病院で処方された漢方薬は、必ず医師の指示に従い服用しましょう。
漢方薬はもともと、生薬を煎じて飲むものでした。現代では、その煎じた液を乾燥させた顆粒状のものが多く用いられています。
顆粒をお湯に溶かして飲む方法は、本来の飲み方に沿う効果的な服用法となります。もちろん、普通に水やお湯で飲んでも構いません。

Q  苦い印象があります。 味はどうでしょうか。

漢方薬の中には甘い味のものもありますが、苦いものが多いです。苦みを和らげる工夫として、まず水を口に含んでから飲む方法があります。それでも飲みにくい場合は、水以外の飲み物で試してみるのもよいでしょう。麦茶や炭酸水のほか、ココアやコーヒー、抹茶のような味の濃い飲み物もオススメです。オブラートを使用する方法もあります。最後はやはり「良薬口に苦し」ということわざの通り、苦みを受け入れる広い心も必要なのかもしれません。

Q  水戸赤十字病院でも漢方薬は使われていますか。

当院でも、さまざまな疾患や症状に漢方薬を活用しています。風邪などの内科疾患のほか、開腹手術後の腸閉塞予防、女性の冷えや更年期症状への対策、がん患者さまの症状緩和などです。ただし、患者さまによって漢方との相性が異なるので、必ずしもすべての方に漢方薬が使用されるわけではありません。

Q  最後にメッセージをお願いします。

漢方薬は体にやさしい一方で、場合によっては驚くほどの効果を発揮することもあります。 風邪を引いた時や、体調を崩してしまった時には、気軽に市販の漢方薬を試してみてみるのも一つの方法です。漢方薬を選ぶ際には、症状だけでなく、自分の体質との相性が重要です。体質に合わない場合は十分な効果が得られません。薬剤師に相談することをおすすめします。また、市販薬でもむやみに服用し続けると副作用を起こすリスクがあるため、症状が落ち着いたら服用をやめることが望ましいでしょう。

当記事は、令和5年10月20日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに、一部令和7年の最新情報を加えて制作しています。