医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに
医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第8回は、森島 老人看護専門看護師に「認知症」についてインタビューしました。
Q はじめに今回の「認知症」というテーマを選んだ理由を教えてください。

私は、老人看護専門看護師という資格を持っています。その老人看護専門看護師は、2024年12月時点で全国285名が認定されており、茨城県内では5名おります。老人看護専門看護師の役割は、高齢者の認知症や嚥下障害といった複雑な健康問題を踏まえ、生活の質を向上させるため専門的看護を提供することです。認知症看護認定看護師と連携しながら入院している認知症の患者さまへより良い看護の提供に取り組んでいます。今回はこれまでの経験を踏まえ、皆さんに、改めて「認知症とは何か」「認知症に気づくポイント」「認知症をどのように予防するのか」をこの機会に知っていただきたいと思い「認知症」をテーマに選びました。ご高齢の方だけでなく、同居されているご家族にもご理解いただければ幸いです。
Q それでは、認知症について教えてください。
「認知症」とは、様々な脳の病気によって、脳の神経細胞の働きが徐々に遅くなり、記憶や判断力などの認知機能が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。2024年9月に発表された日本の高齢化率は29.3%と、年々伸びており、過去最高を更新し続けています。中でも心配されるのは、日本の高齢者の約8人に1人が認知症であり、そこに認知症の前段階である軽度認知障害も加えると、高齢者の3~4人に1人が認知機能低下と指摘されていることになります。
Q 認知症はどのような症状が起こるのでしょうか。
代表的なものには、「もの忘れ」があります。皆さんは今日の朝ごはんのメニューを覚えているでしょうか。認知症では、数分前・数時間前の出来事を忘れやすく、朝ごはんのメニューを覚えていなかったり、食べたこと自体を覚えていないということもあります。他には、「同じことを何度も言ったり、聞いたりする」「大事な約束を忘れてしまう」「しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしている」「慣れた道で迷うことがある」などがあります。さらに、これらの「もの忘れ」に関連して、勘違いをすることが多くなり、不安や憂うつが強くなったり、怒りっぽくなったりすることもあります。
Q 認知症の方は「もの忘れ」をして辛い思いをされているのですね。
はい。認知症の方は、忘れてしまうことを自覚したり、もの忘れを指摘されたりして辛い思いをされていると思います。しかし、全てを忘れてしまうわけではありません。過去の印象深い出来事の記憶や体に染みついた習慣的な記憶は忘れにくく、周りのご家族などがサポートすることで安心して生活することができます。
Q 認知症の方が入院することもあるかと思いますが、普段からどのようなことに気をつけていますか?

年を重ねるとさまざまな病気や転倒などによる骨折で入院するケースがあります。認知症の方は、新しい環境に適応することが苦手で、居心地の悪さを感じながらの療養生活になります。入院の場合には、慣れない検査や点滴治療、手術等、患者さま自身に負担がかかることがたくさんあります。入院患者さまの中には、自分が病気や怪我をして入院していることを忘れてしまい、精神的にも大きく混乱される方もいます。私は、認知症患者さまが入院している病棟の看護師と意見交換をし認知症患者さまの物忘れによる療養生活の支障が最小限になるように努めております。時には、病院内にいる脳神経内科の医師やリハビリスタッフ、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士などと連携して、適切な療養生活が送れるようサポートしています。
Q 認知症を予防することはできますか?
認知症の最大の要因は加齢(年を重ねること)です。加齢を止めることはできませんが、日々の生活習慣が認知症の発症をある程度予防することができると言われています。例えば、生活習慣病にならないように気を付けることはもちろんのこと、バランスの良い食事、定期的な運動、趣味や生きがいを見つけて生き生き過ごすことが推奨されています。人と会話することで脳が活性化されるので、どんどん社会活動に参加していただくことをおすすめします。
Q 認知症かも?と思った時はどうすれば良いですか?
まずはかかりつけの医師にご相談ください。その他の窓口としては、ケアマネージャーや各市町村に設置されている地域包括支援センターで相談することができます。そこから必要時、近くの専門の病院を紹介してもらい、検査や治療を受けることができます。
Q 最後にひとことお願いします。
皆さんの中で認知症にマイナスなイメージをお持ちかもしれませんが、冒頭に申し上げたように全てを忘れるわけではありません。これまで以上に自分自身の健康に気をつけていただき、普段の生活を工夫したり、周りのサポートを受けることで安心して生活することができます。当院では、認知症の他にも専門性の高い看護師や非常に熱心な看護師が多く在籍しています。何かお困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。
当記事は、令和6年11月29日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。