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医療メディア水戸赤十字病院の今日もおだいじに

医療や病院にまつわる"ちょっと気になる耳寄り情報"を掲載していきます。
第11回は、大房 眼科医師に「白内障・緑内障・飛蚊症」についてインタビューしました。

第11回
白内障・緑内障・飛蚊症について
大房 眼科医師

Q 白内障や緑内障、飛蚊症はよく耳にする眼の病気ですが、正しく理解されている方は少ないのではないでしょうか。まず、白内障にはどんな症状が現れるのでしょうか。

人間は外部から得る情報の90%を眼から取得しているといわれており、眼は生きていく上で非常に重要な器官です。
「白内障」と「緑内障」名前は似ていますが、実は全く違う病気です。
白内障とは眼の中にある水晶体というレンズが濁ってくる病気です。 白内障は加齢により発症することが多く、70歳で80%以上、80歳以上では100%の方にみられるといわれています。ただ、視力の低下具合や自覚症状には個人差があります。自覚症状としては視界がぼやける・かすむ・二重に見える・まぶしさを感じるといったものから始まり、徐々に視力も落ちていきます。
原因は加齢によるものが多いですが、若い方でも、膠原病や喘息などで長期にステロイドという副腎皮質ホルモンを服用している方、糖尿病の方、アトピー性皮膚炎があり眼を日常的にこすってしまう方、外傷後の方、眼の近くに放射線治療を行った方なども起こりやすいです。

Q  白内障になった場合の治療法を教えてくさい。

治療は点眼と手術です。点眼には進行抑制効果があるとされています。しかし、白内障は加齢現象なので点眼をつけていても進行してしまいます。また、点眼で濁った水晶体を透明にすることはできないので出てしまった症状を改善することはできません。目の不自由を感じ、改善したいと思ったら手術になります。当院では自覚症状がつらく感じる場合や、運転免許をお持ちの方で免許の更新に必要な視力が白内障のために更新できない方には手術をお勧めしています。

Q では次に緑内障は、どのような症状ですか。

緑内障は多くの場合、眼圧が高くなることにより視神経が圧迫・障害され視野に障害が生じてくる病気です。
視神経の障害が原因で見える範囲(視野)が狭くなります。日本における失明の原因の1位となっている病気で、40歳以上の日本人の有病率は約5%、つまり20人に1人は緑内障です。自覚症状が出るのはある程度進行してからになり、初期段階では全く自覚症状が出ないという厄介なものです。一度出てしまった視神経の障害を回復させる手段は現在の医療では存在せず、早期発見・早期治療により進行を抑えることが非常に重要です。
緑内障の原因は様々ですが、多くの場合は眼圧が高いことが原因です。健康診断などで受ける眼圧検査で正常とされている眼圧は10~21です。しかし、正常眼圧緑内障といって一般的には正常とされている眼圧でも緑内障の症状が進行してしまうタイプがあり、日本人の中では一番多いタイプです。眼圧が正常域だから安心ということではありません。

Q 緑内障の治療方法を教えてください。

治療としては、ほとんどの方が点眼治療を行います。白内障とは違い、「手術すれば完治してもう心配が無い」という疾患ではありません。点眼治療だけでは病状が安定しないときのみ手術治療も選択されることがあります。
緑内障の治療は進行を抑えることが目的となるため、治療を行っても症状が改善することはありません。このため診療を自己中断してしまったり、点眼が抜けがちになってしまう方もいますが、その場合はほぼ確実に悪化してしまいます。そこから治療を再開しても元には戻らないため、自覚症状の変化が無くても治療を継続していくことが非常に重要です。

Q 3つ目のテーマの飛蚊症について教えてください。

飛蚊症は眼球の中の硝子体というゼリー状の部位が濁ることによって視界に蚊のような混濁が見えるものです。濁りの状態により見え方も様々で、透明に見えたり黒く見えたり、点のように見えたりひも状に見えたりします。特に明るい場所で白い壁を見たときに生じやすく、視界をずらしても影が少し遅れてついてきます。目やにやゴミでも同じようになることがありますがこの場合はまばたきや眼を洗うことにより症状が改善します。飛蚊症の場合は改善しません。
原因の多くは加齢による生理的なもので経過を見ることが多いです。網膜に穴が開く網膜裂孔や硝子体出血など治療を要するものもあります。原因によっては放置することによって最悪失明に至ることもあるため、症状に変化があった場合には一度眼科を受診することが重要です。

Q 加齢によるものが多いようですが、どんな症状が出たら受診をしたほうが良いのでしょうか。

白内障や緑内障などの眼の中の器質的疾患による視力低下は、近視や遠視・乱視・老眼などとは異なり眼鏡やコンタクトレンズでは矯正できないことが特徴の一つです。眼鏡でも良くならない見えにくさを自覚した場合には眼科受診が必要です。
また、飛蚊症や原因不明の視力低下などの場合は散瞳検査という瞳孔を開いて水晶体の全体を見たり、眼底を詳しく見たりする検査が必要になります。その場合は個人差がありますが、検査後3~4時間程度運転が困難になりますので、公共の交通機関の利用や、送迎のお願い、運転できるようになるまで待てるよう予定を調整するなどして眼科を受診していただくようお願いします。

当記事は、令和6年12月20日のLuckyFM茨城放送「水戸赤十字病院の今日もおだいじに」をもとに制作しています。