文字サイズ
背景色の変更
診療科・部門

泌尿器科前立腺がん

前立腺がんとは?

前立腺は、男性の膀胱の下にある栗の実大の臓器であり、発生から増殖・成長まで男性ホルモンに依存しています。前立腺液の分泌、精子の運動・保護に関与したり、排尿にも影響を与えます。

もともと、前立腺がんは欧米人に多く、アジア人には少ない傾向がありました。しかし、昨今では高齢化や食生活の欧米化に伴い、日本での罹患率が非常に増加しています。がん登録・統計(2017年、国立がん研究センター)によると、前立腺がんは男性がんの1位となっています(2位:胃がん、3位:大腸がん)。

前立腺がんは、初期には症状がないことがほとんどですが、がんの進行に伴い、骨転移による腰痛などさまざまな症状が出てきます。

前立腺がんの診断

前立腺がんの診断には、血液検査(PSA:腫瘍マーカー)が有用です。
PSA(Prostate Specific Antigen:前立腺特異抗原)は、前立腺で作られるタンパク質の一種です。

前立腺がんではPSAの数値が高くなります。PSAの数値が高い場合、MRI検査をします。その結果、前立腺がんが疑われた場合には、診断確定のために前立腺生検を行います。生検によって確定診断された場合、進行度を確認するために画像診断(CT・骨シンチグラフィーなど)を行い、病期を決定します。

当院での生検について

当院では、前立腺MRI画像と超音波画像を融合したMRIターゲット生検(fusion biopsy)を行っております。超音波画像とMRI画像を融合することで、これまで超音波画像だけでは診断できなかったがんに対して、より正確に前立腺がんを診断できます。

前立腺がんの治療

前立腺がんにはさまざまな治療があります。

  • PSA監視療法
  • 手術(前立腺全摘除)
  • 放射線治療
  • ホルモン治療
  • 抗がん剤治療
  • 遺伝子治療

がんの進行度と悪性度によって、治療の選択肢は変わります。十分に説明を受け、選択することが大切です。

手術(前立腺全摘除術)

がんが前立腺に限局している早期がんの場合に適応となります。手術療法においては、開腹手術・腹腔鏡手術などに加え、ロボット手術(ダビンチ手術)が急速に普及しています。ロボット手術は2012年4月から保険適応となり、当院でも2013年9月から開始しました。

2022年7月時点、前立腺全摘除術のほぼ全例でロボット手術が行われており、550例以上の実績があります。

ロボット手術は従来の開腹手術や腹腔鏡手術と比べると、尿禁制(尿失禁がない状態のこと)や性機能を含む機能温存について優れていると考えられています。

内分泌(ホルモン)治療

転移のある進行がんに対して行います。
前立腺がん細胞は男性ホルモン(テストステロン)の刺激により増殖を続けます。このテストステロンを遮断することで、がん細胞の増殖を抑えようとする治療法です。癌細胞を完全に取り除くわけではなく、増殖を抑える治療方法です。

テストステロンを分泌している両側の睾丸(精巣)を摘除したり、定期的(1ヶ月に一度あるいは3ヶ月に一度)に注射や内服をしてテストステロンの分泌を抑えます。副作用は、勃起機能不全、体のほてり感(ホットフラッシュ)、乳房の痛み、女性化乳房などがあります。また、長期に使用すると骨粗鬆症や骨折が起こる場合があります。

抗がん剤治療

去勢抵抗性前立腺がん(テストステロンを抑えているにもかかわらず進行してしまう状態のがん)に対して行うことがあります。
最近では、進行したがんに対しては、初回治療時から使用できるようになりました。

遺伝子治療

去勢抵抗性前立腺がんに対しては、2021年から、特定の遺伝子変異がある場合に限り、「オラパニブ」という新たな前立腺がん治療薬が使用可能となりました。