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診療科・部門

泌尿器科下部尿路症状

ボトックス膀胱壁内注入療法

特徴

内視鏡を用いてボトックスという薬物を膀胱壁内の筋肉に注射する治療です。

作用

ボトックスの有効成分はボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素です。膀胱壁内の筋肉に注射することで膀胱の神経に結合し、筋弛緩作用(筋肉をゆるめる)を示し、過活動膀胱による症状を改善します。ボトックス注射は、眼瞼けいれん、顔面けいれん、痙性斜頸などで保険適用され広く施行されている安全な治療です。世界90ヵ国以上で認可されています。

施術方法・所要時間

実施に際しては、腰椎麻酔(下半身麻酔)、全身麻酔、膀胱局所麻酔(麻酔薬の膀胱内注入)のいずれかで行ないます。膀胱の筋肉に細い針でボツリヌス毒素を100~200単位、20~30箇所に分けて注入します。手術時間は10~20分程度です。当院では安全性を十分考慮し、1泊もしくは2泊の入院で治療を行っています。

費用

保険診療では、2割負担の患者さんで2~3万円、3割負担の患者さんで5~6万円程度の自己負担額となります。

治療効果

通常、効果は治療後2~3日であらわれ、4~8か月にわたって持続します。(効果の程度や持続期間には個人差があります)

約80%の患者さんで有効、排尿回数が12~53%、尿失禁回数が35~85%減少したという報告があります。効果が不十分、または薬の効果が弱まり症状が再燃した場合は、前回投与から3か月が経過していれば、再投与を検討します。

副作用

血尿、尿路感染症、排尿困難、尿閉、アレルギー反応など
国内で行われた臨床試験では、排尿困難が9%、尿路感染が9%、尿閉が5%でみられています。

ボトックス治療が適さない患者さん

尿路感染症に罹患中、残尿が多い、全身性の筋力低下を起こす病気(重症筋無力症・ランバートイートン症候群・筋萎縮性側索硬化症)に罹患、既にアレルギー反応がでることがわかっている患者さんなどは治療対象外となっております。

仙骨神経刺激療法(SNM)

特徴

仙骨神経(排泄に関係する神経)に持続的に電気刺激を与えて過活動膀胱の症状改善を図ります。

作用

膀胱の働きは脳から脊髄を通り、膀胱へ至る神経によって調節されています。膀胱に直接作用する神経は主に仙骨領域から分布されます。この神経による調節がうまくいかなくなると、頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁などの過活動膀胱症状を生じます。SNMは排泄(排尿、排便)に関係する仙骨神経に継続的に電気刺激を与え、排尿・排便症状の改善を図ります。
欧米では1990年代から行われており、日本でも2017年に保険収載されました。

施術方法・所要時間

持続的に電気刺激を行うために、心臓ペースメーカーのような装置を臀部に植え込みます。
手術は2回に分けて行います。まず、リードと呼ばれる刺激電極を仙骨部に植え込み、体外に装着した刺激装置から約1~2週間、試験的に刺激を行い、十分な治療効果が得られるか確認します。効果が認められた場合は、2回目の手術で体内植込み型の刺激装置を臀部に植え込んで治療を継続します。
効果が認められなかった場合はリードを抜去し、術前の状態に戻します。

費用

保険診療で実施でき、2割負担の患者さんで3万円、3割負担の患者さんで6万円位の自己負担額になります。

治療効果

治療効果は個⼈差がありますが、海外で行われた臨床試験では約8割の方で尿失禁の回数が半分以下に減少、約4割の方で尿失禁が消失、約7割の方で尿の回数が半分以下、または正常な回数になると報告されています。

副作用

植込み部位疼痛、植込み部感染、リード破損や位置ずれ、血腫、四肢痛、皮膚刺激、臀部痛、刺激感覚の変化、胸痛、便秘、医療用具機能不全、下痢、不快感などが挙げられます。

SNM治療が適さない患者さん

試験刺激で効果が得られない、本システムを正しく操作することが不可能、解剖学的にリード留置が困難な患者さんは適応外となります。

併用禁忌

ジアテルミー、MRI(一定の条件下では頭部のみ撮像可能)