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診療科・部門

泌尿器科膀胱がん

膀胱がんとは?

膀胱がんは前立腺がんに次いで、泌尿器科領域では2番目に多いがんです。
初期症状として、血尿が現れることが多いです。肉眼でわかる血尿のこともあれば、顕微鏡で検診して確認できる程度の血尿のこともあります。

診断は、胃カメラのように膀胱に内視鏡を入れて腫瘍を視認できれば直ちに可能です。膀胱鏡検査に要する時間も5分程度です。男性は陰茎があり、より痛みがありますので尿道麻酔を使用します。転移の有無などを調べるために、CT等の画像検査も行います。

腫瘍が確認されれば、まず経尿道的手術で腫瘍を切除します。内視鏡手術であり、通常は下半身のみの麻酔で手術します。この手術の意義は、腫瘍の組織を採取することで、確定診断をつけることにあります。正確な病期(ステージ)を診断し(筋層へのがん浸潤の有無や悪性度の高さ、組織型など)、その後の治療方針を決定することができます。

膀胱がんの治療について

膀胱がんの治療方針は、がんが筋層に浸潤しているかどうかで大きく異なります。筋層内にがんがない場合、基本的には膀胱全摘出をする必要はありません。

筋層内にがんがある場合、転移の有無にもよりますが、膀胱全摘出が第一選択です。膀胱を全摘出するので、尿路変向術(尿の通り道を作成する手術)が必要になります。

身体にストーマを増設し、集尿パウチの貼付・交換が必要になります。ボディイメージの変化とQOL低下を招きますが、安全性が確立されていることから、当院では回腸導管という蓄尿できない尿路変更を主に行っています。

また、膀胱全摘除術の方法も、開腹手術、腹腔鏡、ロボット支援手術と進歩しており、当院においてもロボットによる最新の方法での手術が可能です。

膀胱がんのロボット支援手術

ロボット支援下根治的膀胱全摘除
(RARC:Robot-Assisted Radical Cystectomy)

筋層まで浸潤した膀胱癌や、BCG膀胱内注入療法等の薬物治療に抵抗性を示す悪性度の高い筋層非浸潤性膀胱癌に対する標準治療が膀胱全摘除術です。
従来、開腹膀胱全摘除術が広く普及し、確立された術式でした。
開腹膀胱全摘除術の課題には、手術中の出血量が多く輸血の施行率が高いこと、傷が大きく術後の回復が遅れることなど、周術期の合併症の発生率が比較的高いといった点があります。

医学の進歩により、腹腔鏡下膀胱全摘術(LRC:Laparoscopic radical cystectomy)が確立されました。出血量が少なく、合併症発生率、手術時間、治療効果の全ての点において開腹膀胱全摘除術と相違ない成績が示され、限られた施設で行われてきました。当院においても、症例に応じて腹腔鏡下膀胱全摘術を施行してきました。

本邦でも手術用ロボット(daVinci surgical system)が普及し、膀胱全摘除術においても、ロボットを用いた術式が保険適応になりました。
手関節以上に自由度の高いロボット鉗子を用いることで、腹腔鏡手術に比して膀胱周囲組織の精密な切開が可能で、膀胱の摘出やリンパ節郭清などの手技をより正確かつ早く行うことができます。また、腹腔鏡手術同様、傷口が小さくすむので、術後の痛みが少なく、出血量も少ないことから、社会復帰までの時間も早くなりました。

転移のある膀胱がんの治療

診断時に転移がみつかった場合や治療後に転移が出現した場合は、膀胱全摘術で癌を取り除くことはできません。治療としては、手術ではなく抗がん剤による化学療法になります。抗がん剤の一次治療として、当院では主にGC療法を施行しております。

  • シスプラチン+ゲムシタビン(GC療法)
  • 腎機能が悪い場合はゲムシタビン+カルボプラチン(GCalbo療法)

GC療法で効果がなかった場合や、GC療法後に再発を認めた場合は、二次治療として免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダが標準治療です。最近では、一次治療の効果持続を目的としたアベルマブ(バベンチオ)維持療法という選択肢もあります。

GC療法について(G:ゲムシタビン、C:シスプラチン)

がんが大きく手術で取り切れない場合や、転移している場合に行う標準的な化学療法です。約半数に癌縮小が見られ、およそ1割はがんが消失するとされます。癌が縮小し、手術可能になった場合や転移が消失した場合には膀胱全的術も考慮します。GC療法は4週間を1コースとし、それを繰り返します。術前・術後の化学療法の場合は2~3コース、転移を有する場合は通常6コース施行します。

キイトルーダ(ペンプロリズマブ)による治療について

キイトルーダは抗PD-1抗体と呼ばれる薬剤です。
免疫細胞などの表面にあるPD-1というタンパク質と、がん細胞表面に出現したPD-L1というタンパク質とが結合すると、がん細胞を攻撃する免疫機能が阻害されることが知られています。キイトルーダはこの結合を阻害、すなわち免疫チェックポイント阻害作用を発揮することにより、がん細胞への免疫のブレーキを外して、がん縮小効果を示すといわれています。

一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発・進行した、あるいはプラチナ製剤併用療法による術前もしくは術後補助化学療法終了後12ヵ月以内に再発・進行した、局所進行または転移性尿路上皮がん542例(日本人患者52例含む)に対しキイトルーダと化学療法を比較する試験において全生存期間中央値が10.3か月(化学療法群は7.4か月)で有意に延長しました。奏効率(腫瘍の直径が30%以上縮小する割合)も21.1%(化学療法群は11.4%)で有意差を認めました。

キイトルーダは点滴です。尿路上皮がん患者さんの場合、通常1回あたり、200mgを3週間間隔で点滴します。1回の点滴は1時間ほどかかります。