ラジオ放送水戸赤十字病院の今日もお大事に
第25回 泌尿器科(院長野澤英雄) 
Q 改めて泌尿器科について、どんな診療科なのか教えてください。
泌尿器科は膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎などの感染症、前立腺肥大症や過活動膀胱・尿失禁をはじめとした排尿障害、激しい疼痛を伴う尿管結石などの良性疾患、腎臓、尿管、膀胱、前立腺、精巣の悪性腫瘍など泌尿器系の臓器を専門に扱う診療科になります。具体的には、前立腺がんや膀胱や腎臓のがん尿路結石、前立腺肥大症、下部尿路症状で過活動膀胱や尿失禁、夜間頻尿、排尿障害などがあります。特に前立腺肥大症は、高齢男性の代表的な疾患のひとつとなっています。男性の場合は、前立腺に関する疾患が多く、女性の場合は、尿失禁や膀胱炎といった疾患が多くなっています。また男性女性問わず腎臓結石は、比較的多くある疾患です。
Q 男性のがんの中でも多いとされる前立腺がんについて詳しくお話を伺いたいです。前立腺がんとは、どのようながんなのでしょうか。
前立腺がんは、男性特有のがんで、特に高齢の男性に比較的多くみられます。まず前立腺というのは、膀胱の出口付近に位置していてくるみの実のような形をしている臓器になります。この前立腺にできるがんが前立腺がんです。前立腺に多い疾患として前立腺肥大症がありますが、前立腺がんとは基本的には別の疾患になります。前立腺がんは、もともと欧米人に多くアジア人には少ない傾向にありましたが、最近では日本でも高齢の男性を中心に罹患数が非常に増加しています。
Q 日本でも罹患数が増加しているとのことですが、日本ではどのくらいの方が前立腺がんと診断されているのでしょうか。
2020年のデータによりますと日本全国で年間87,756人が前立腺がんと診断されています。これは日本の男性がんで最も多く第1位になっています。診断数は多いのですが、前立腺がんによる死亡数はそれほど高くありません。2023年のデータによれば前立腺がんによる死亡数は、13,439人で、男性のがん死亡数の中で第6位となっています。
Q 診断数は多いのに、死亡数は比較的少ないのですね。これは何か理由があるのでしょうか。
前立腺がんは、高齢化や食生活の欧米化、家族歴、遺伝的要因、加齢によるホルモンバランスの変化などにより引き起こされると考えられています。前立腺がんの進行速度は、比較的遅く、初期の前立腺がんは無症状、自覚症状がないことが多いです。そのため早期発見がとても重要です。早期に発見されれば治療の効果が高いことが理由の一つと考えられます。