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診療科・部門

外科肝癌・膵癌・胆管癌・転移性肝癌について

肝癌・膵癌・胆管癌・転移性肝癌

このページでは、

  • 肝癌(肝臓癌)
  • 膵癌
  • 胆管癌(胆道癌)
  • 転移性肝癌(転移性肝腫瘍)
について、原因や治療法等を説明します。

肝癌(肝臓癌)

種類

肝癌は、肝臓自体から発生した原発性肝癌と、他の癌から肝臓に転移した転移性肝癌(=転移性肝腫瘍)に分けられます。 原発性肝癌は更に、発生の由来から肝細胞癌と肝内胆管癌(=胆管細胞癌)に大別されます。
ここでは、原発性肝癌の中でも圧倒的に多い肝細胞癌について述べてゆきます。

頻度

肝細胞癌が約93%、肝内胆管癌が約5%、その他2%。

原因、リスク

肝炎ウイルス(B型肝炎、C型肝炎)、アルコール多飲が原因としては多いですが、最近では肥満や糖尿病を背景とした非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの発癌も増えています。 米国の研究では、肥満者においては男性で約4.5倍、女性で約1.7倍、肝癌のリスクが高くなると報告されています。 よって、肝炎ウイルス陽性やアルコール多飲者でなくても、定期的な腹部超音波検査等の検診は重要です。

発癌について

上記の原因があってもすぐに発癌するわけではありません。多くは数年から10数年かけて、慢性肝炎、肝硬変へと肝臓全体が発癌状態に変化してから肝癌が発生します。 そのため、癌発見時に、病変が1個とは限らず、複数個認めることもあれば、治療しても全く別の部位に新たに発生してくることもあります。
よって、病変部以外も詳しい検索と、治療後も長期的な経過フォロー、が大切です。

早期発見のために

初期診断として最も有用な検査は腹部超音波検査です。疑いがあれば、CT、MRIなどで精密検査を行ってゆきます。
早期発見のために、皆一律ではなく、発癌リスクに応じて細やかな管理が重要であると考えており、それぞれのリスクをみながら、個々に合わせた診療を心掛けています。

治療法

肝細胞癌の治療法には、手術、ラジオ波凝固療法(RFA)、エタノール注入療法(PEIT)、化学療法、動注療法、経カテーテル的動脈塞栓療法(TAE)、放射線治療、肝移植など様々な方法があります。 一般的には腫瘍の大きさ、個数、肝機能により治療の大枠は判断、選択されます。 しかし、実際にはこれだけで治療法が決まるわけではなく、患者さんの年齢、全身状態、腫瘍の部位、治療リスク、など様々な点を考慮して総合的に判断し、かつ患者さんの希望も照らし合わせて選択しています。

特に現在、治療法の選択で意見が分かれるのが、大きさ3cm以下かつ腫瘍個数3個以下の肝細胞癌です。 ガイドライン上は、外科的切除、ラジオ波凝固療法どちらでも選択可能とされています。それぞれに長所、短所があり、手技上も全く異なる治療法であり、どちらかに優劣をつけることは困難です。 当院では、肝機能、全身状態、年齢、腫瘍の場所、腫瘍と周辺血管や周辺臓器との位置関係、患者さんの希望、など様々な視点から治療法を検討し、患者さんに最も適した治療法を選択するように努めています。

膵癌

はじめに

膵癌は自覚症状に乏しく、さらに浸潤傾向が強いため、発見時には周辺組織への高度な浸潤や、肝臓などへの遠隔転移、腹膜転移などで、根治的切除が困難なこともしばしばです。 膵癌は他の消化器癌と比較しても予後が厳しい癌ですが、手術は唯一の根治的な治療法であり、少しでも早く発見し、切除することを目指しています。

自覚症状

癌が膵頭部であれば、黄疸、背部痛、上腹部痛など。膵体尾部では背部痛、上腹部痛が主であり、黄疸は出ません。

発癌リスク

糖尿病、膵癌の家族歴、肥満、喫煙、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)など。

早期発見のために

通常、血液検査のみでの早期発見は困難です。
腹部エコーは初検査として最も推奨されていますが、一般的に検診としての腹部エコーでの膵癌検出率は決して高くはありません。しかし、主膵管拡張やのう胞などの間接所見にも注意を払い、このような所見が認められた場合には、CTやERCP,PETなどの精密検査、エコー検査の細やかな再検を行い、できる限りの早期発見に努めています。

また、発癌リスクのある方については、より細やかな管理が重要であると考えており、それぞれの発癌リスクをみながら、個々に合わせた診療を心掛けています。

治療

膵頭部であれば膵頭十二指腸切除術、膵体尾部であれば膵体尾部切除術を行います。 門脈への浸潤がある場合には門脈合併切除を行います。発見時、高度進行例も多いがんですが、手術が治療の中心であり、手術の可能性について最大限追及いたします。 膵頭十二指腸切除術は腹部手術の中では比較的大きな手術の一つですが、腫瘍を確実に切除し、かつ合併症の少ない安全な手術を心掛けています。

しかし、上腸間膜動脈、総肝動脈などへの浸潤、肝転移、腹膜転移が明らかな場合など、根治的切除が困難な場合には、化学療法を主体とした治療を提案することになります。

切除が困難な場合でも、黄疸に対しての胆道ステントの挿入、消化管の通過障害改善の為のバイパス手術、疼痛コントロール、などの緩和治療も患者さんの状態をみながら、行っています。

当科では、担当医が、診断から治療まで全てに責任と主体性を持って対応し、安心してかかっていただけるように努めています。

胆管癌(胆道癌)

はじめに

胆道癌は発生する部位により、肝内胆管癌、肝門部胆管癌、上部胆管癌、中部胆管癌、下部胆管癌、乳頭部癌、胆嚢癌などに分けられます。

症状

黄疸が最も多い症状です。これは、胆汁の通り道である胆管(胆道)が癌により閉塞することが原因であり、とくに閉塞性黄疸と呼ばれます。

診断

閉塞性黄疸を認めた場合には、腹部エコー、腹部CT等で、閉塞の部位、原因について判断します。原因精査のために、更に内視鏡を用いた胆管造影検査(ERCP)を行います。

治療

黄疸は放置すると肝不全を来すため、先ず黄疸の治療(減黄)が必要であり、内視鏡を用いて胆管にドレナージチューブの挿入(ENBD,ERBD)もしくは、体表から直接胆管を穿刺しドレナージチューブの挿入(PTCD、PTBD)を行います。

その後、CT、胆道造影検査を詳細に検討し、癌の部位、範囲を判断し、それに応じて胆管を含めた肝切除、膵頭十二指腸切除、肝膵頭十二指腸切除などの手術を選択します。肝転移、腹膜転移などで、手術適応の無い場合には、化学療法を提案することになります。

切除が困難な場合でも、黄疸に対しての胆道ステントの挿入、消化管の通過障害改善の為のバイパス手術、疼痛コントロール、などの緩和治療も状態をみながら行っています。

当科では担当医が、診断から治療まで全てに責任と主体性を持って対応し、安心してかかっていただけるように努めています。

転移性肝癌(転移性肝腫瘍)

はじめに

転移性肝癌とは、他の臓器に癌があり、そこから肝臓に転移したものを指します。

治療

最も多いのは、大腸癌からの肝転移です。大腸癌からの肝転移は切除により根治を目指すことが可能であり、適応症例には積極的に手術を考えています。
手術適応は、

  1. 全身状態が良好で耐術可能
  2. 大腸原発巣が制御可能
  3. 肝転移病巣が遺残なく切除可能
  4. 肝臓以外の臓器に転移がないか制御可能
  5. 肝切除後の残肝機能が十分残るもの

以上を満たすものです。高度進行例ですぐの手術が困難な場合でも、化学療法を併用することで切除が可能となる場合があります。ラジオ波凝固療法については、肝転移への有効性が現時点では確立されていないため、通常行ってはいません。

胃癌からの肝転移は、大腸癌と異なり、切除の有効性については確立されていません。よって化学療法が選択されることが多いですが、転移個数の少ないもの、転移部位が片葉である、などでは切除の有効性を示す報告もあり、状況に応じて手術も考慮しています。