当院創立100周年を記念とした記念誌を発行しました。
「100年に感謝~これからも地域とともに~」をテーマに、当院の歴史、特徴、部署紹介等を記載しています。
院長挨拶
-
大正12(1923)年、「日本赤十字社茨城支部病院」として開設された当院は、時代によって変化する医療ニーズに応えるため、その姿を変えながら、地域の中核病院として、100年間、その役割を果たしてまいりました。
関係各機関や地域の皆さま方から、これまでにいただいた多大なるお力添えに心から感謝申し上げます。そして、当院の歴史と伝統を紡いでくださった諸先輩方、職員の皆さま方に深く敬意を表します。
創立以来、戦争、自然災害、感染症の流行など、数多くの困難を乗り越え、地域医療を支えてまいりました。近年は、県内の新型コロナウイルス感染症対応の最前線に立ちながらも、HCU(高度治療室)の新設や遺伝カウンセリング外来の開設など時代のニーズに即した病院づくりを進めています。
創立100周年のテーマは「100年に感謝~これからも地域とともに~」です。地域の皆さまに支えられ、診療を続けてこられたことに感謝し、次の100年も、地域の皆さまの健康を守り、ともに歩んでいける病院で在り続けたいという思いを込めました。
これからも、地域の皆さまの温かい声を力に、職員一同、「地域に愛され、信頼される病院」を目指し、たゆまぬ努力を続けていく所存です。
今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
※佐藤宏喜院長は令和6年2月19日に急逝いたしました。
MOVIE
水戸赤十字病院の
5つの特徴
①基幹災害拠点病院
当院は、1997年に茨城県基幹災害拠点病院(および茨城県基幹災害医療センター)に指定されました。基幹災害拠点病院は、災害時に被災者を受け入れ、地域の医療機関を支援する機能を持つ災害拠点病院の中でも、中心的役割を果たす病院です。各都道府県に原則1か所設置されています。
県内で災害が発生したときには、被災者の受け入れや日赤常備救護班を派遣できる体制を整えています。また48時間以内に救命活動を行う災害医療派遣チームDMATも備えています。平時から救護訓練や研修などを実施し、救護活動に必要な技術と迅速な行動力の育成に努めています。
2011年3月11日の東日本大震災では、発災後から外来・入院多くの患者さんを受け入れ、県内の避難所や東北各県に対して救護班や病院支援要員を派遣しました。さらに2016年4月の熊本地震や、台風被害にも救護班を派遣するなど、国内の被災地支援に尽力しています。 また、国際的な緊急時の救援や予防活動、医療の技術・教育支援なども行っており、アフリカのウガンダに医師1名を派遣した実績もあります。
これからも、地域の災害医療体制の中核的存在として役割を果たしていきます。
②第二種感染症指定医療機関
二類感染症とは、急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症呼吸器症候群、中東呼吸器症候群、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)の7疾病です。当院は、県から第二種感染症指定医療機関として指定を受けており、3年を超える新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応にも総力をあげて取り組んできました。
COVID-19対応では、2020年2月にCOVID-19患者さんを乗せたダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に寄港したと同時に、帰国者・接触者外来を設置し、同船にDMAT隊員を派遣するとともに、同船感染者の受け入れを行ってきました。二類感染症病床10床に加え、2022年には最大85床まで拡大し、通常診療がひっ迫しながらも、行政、県内外の企業や団体、個人の方々から支援を受け、最前線でCOVID-19対応にあたりました。
これからも医療を取り巻く環境の変化に適切に対応し、通常診療と感染症対応の双方で、当院が担う役割を果たしていきます。
③ロボット支援手術
ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ手術)とは、手術支援ロボットという機器を用いて行う内視鏡手術のことです。医師が操縦席からロボットを遠隔操作し、病変部位の摘出などはロボットアームが行います。医師にとっては、繊細な手の動きを再現するアームと、3Dの拡大画像の元で手術が可能になります。従来の手術と比べて、傷口が小さく出血や痛みが少ない、術後の回復が早い、機能温存が期待できるなど、患者さんにも大きなメリットがあります。
当院では、2013年9月から、泌尿器科においてロボット支援手術を導入しました。現在では、泌尿器科、外科、産婦人科の3つの診療科でロボット支援手術を行っています。安心して手術を受けていただくために、ロボット支援手術の専門研修を修了した医師と、専任の看護師・臨床工学技士でチームを組み、万全の態勢を整えています。手術は年々増加傾向にあり、2023年2月には累計1000症例を達成しました。
今後も、茨城県でのロボット支援手術の先駆けとして、適応分野を増やしながら、地域に求められる医療を提供していきます。
④がん診療指定病院
当院は、2009年4月に茨城県がん診療指定病院として指定を受け、がん診療体制の充実を図ってきました。
外科手術、放射線治療、化学療法など複数の治療法を組み合わせる集学的治療や、ロボット支援手術の導入、手術や化学療法と一緒に受けることができる緩和ケアなど、幅広い治療を行っており、がんの診断・治療から終末期のケア、在宅復帰まで一貫した医療を行うことができます。
がん患者さんとご家族の不安に寄り添う体制も整えています。緩和ケア外来・緩和ケア病棟を設置しており、心理面や社会的側面などを考慮しながら個々人の意向を尊重した総合的ケアを行っています。また、患者支援センターに窓口を設置し、専門の相談員が治療の不安や入院、費用面などの相談支援を行っています。さらに2023年2月からは、遺伝カウンセリング外来を開設し、遺伝性のがんをはじめとした遺伝に関する様々な悩みを支援しています。
これからも地域のがん診療の向上に取り組むとともに、がんに関する相談支援や情報発信を積極的に行い、地域の皆さまに必要とされる病院を目指します。
⑤地域周産期母子医療センター
当院は、2006年3月に茨城県地域周産期母子医療センターに認定され、さまざまなトラブルの可能性が高まる周産期(出産前後の期間)の突発的な事態に備え、産婦人科・小児科・その他関連診療科医師とスタッフが密な連携を取り、皆さまが安心して妊娠・出産ができる環境を整えています。
県内では数少ない助産師外来を開設し、助産師が妊娠から分娩まで時間をかけて対応し、心のケアや経過観察のフォローも行っています。また、2016年9月から院内助産(正常分娩であれば助産師が主導し、リスクが生じた場合は医師が対応する体制)にも取り組み、そのなかで妊婦の想いと主体性を尊重し、自分の好きな姿勢で産むフリースタイルに近いことも行っています。
全国の分娩件数が減っているなか、当院は横ばいを維持しています。近年は、子宮内膜症など子宮に不妊原因となる疾患を抱えている患者さんを手術し、不妊クリニックにつなぎ、妊娠したら当院で出産までをフォローするという連携にも力を入れています。このように他院とも連携を取り、地域の周産期医療のレベルを高め、妊産婦や新生児を支え続けていく病院でありたいと考えています。
100年のあゆみ
- 大正12年6月
-
「日本赤十字社茨城支部病院」として現在地に開設
全国で20箇所目、関東で2番目。大正に入り、近代的医療制度の更なる改善、国の「看護婦規則」の制定や「結核予防法」の制定など医療改善の機運が高まる中での開設。
- 大正12年
-
支部病院開設後、院内職員による県内無医町村への巡回診療開始
- 大正12年8月
-
救護看護婦養成所併設、病室115床整備完了(一般100床、伝染15床)
- 大正12年9月
-
関東大震災 東京へ救護班派遣
- 大正15年
-
開設3周年
病棟増築竣工式(結核病棟、病舎追加、日光浴室、空気浴室の増築)
- 昭和4年
-
日赤総裁閑院宮載仁親王殿下来院
- 昭和6年
-
満州事変
日赤本社の救護班派遣要請で茨城支部に看護婦招集、以降終戦まで救護活動が続く。
- 昭和8年
-
創立10周年記念式
- 昭和12年
-
陸軍病院に指定
- 昭和18年1月
-
茨城支部病院から「水戸赤十字病院」 と改称
- 昭和20年8月
-
病院消失
- 昭和22年9月
-
現在地に病院再建(病床100床)
1945年、第二次世界大戦の戦禍で焼失するも、臨時診療所で診療を続け、1947年に新病院を再建。
- 昭和23年6月
-
福井地震救護 他災害救助
- 昭和27年
-
茨城県で初めて水戸日赤産婦人科で人工妊娠2例成功
- 昭和27年8月
-
結核病棟23床および分娩室竣エ、看護学院および看護学生寄宿舍竣工
- 昭和28年10月
-
小児病棟8床竣工(一般108床、結核59床、伝染8床、計175床)
35周年(昭和33年)に向け、病院の近代化に着手。現代医学の粋を集め最新の施設設備を網羅した病院建設。
- 昭和33年3月
-
外来管理棟・A病棟竣工、放射性同位元素遠隔装置設置
昭和33年から34年にかけて、充実した設備の病棟が続々と竣工し、当時日本赤十字社名誉副総裁秩父宮妃殿下が新病棟のご視察に来られました。
- 昭和34年4月
-
水戸赤十字看護専門学校学生奉仕団結成
- 昭和34年11月
-
B病棟竣工175床から338床に増床
- 昭和35年1月
-
滝本ふみ看護師が、皇太子妃殿下の健康看護係として宮内庁雇員に任命、東宮御所に奉職
以降、水戸赤十字から看護婦数名が保育係養育係として任命(~昭和59年)。
- 昭和40年
-
水戸赤十字病院看護部長潮田きよが 第20回フローレンス・ナイチンゲール記章受賞
- 昭和44年5月
-
水戸赤十字高等看護学院及び寄宿舍竣工
三笠宮妃殿下が校舎のご視察に来られました。
- 昭和51年7月
-
RI棟竣工
水戸赤十字高等看護学院を水戸赤十字看護専門学校と改称。
- 昭和54年7月
-
ベトナム難民鹿島港に入港 救護班派遣
1979年、ベトナム難民を乗せたタンカーが鹿島港へ入港し、臨月を迎えた妊婦を受け入れました。無事に男の子が生まれ、退院時は大勢の職員が見送りました。
- 昭和55年
-
昭和35年度以降、20年ぶりの黒字収支。
- 昭和60年
-
日航機墜落 救護班派遣
救護班4班を派遣し、遺体の検案および遺族の確認補助を行いました。
- 昭和60年12月
-
病床変更(一般380床、伝染8床を一般388床とする。)
2号棟(現2号館)竣工、338床から388床に増床(一般380床、伝?8床)
- 平成6年2月
-
1号棟(現1号館)及びエネルギー棟竣工
現1号館の竣工で、病棟や検査室のほか、後々、患者さんからご好評いただいた大浴場も整備されました。
- 平成7年1月
-
阪神淡路大震災 救護班派遣
- 平成9年1月
-
基幹災害医療センターの指定を受ける
- 平成10年8月
-
那珂川氾濫 救護班派遣
- 平成11年4月
-
第二種感染症指定医療機関(10床)に指定
- 平成11年9月
-
JCO臨界事故 救護所設置
- 平成12年7月
-
388床から510床へ増床
- 平成13年
-
3号館竣工
高まる入院需要に対応するため、老朽化した旧外来棟を取り壊し、現在の3号館が完成しました。
- 平成16年10月
-
新潟県中越地震 救護班派遣
- 平成19年3月
-
水戸赤十字看護専門学校閉校
卒業生2673名、最後の戴帽式となった。
- 平成20年4月
-
DPC請求開始
- 平成23年3月
-
東日本大震災 救護班派遣
東日本大震災発生時は、病院も大きな被害を受けましたが、災害拠点病院として、救急患者を受入れました。被災地に救護班を派遣し、救護活動にも従事しました。
- 平成23年4月
-
地域医療支援病院の承認を受ける
- 平成25年9月
-
ダ・ヴィンチ導入・泌尿器科を中心にロボット支援手術開始
近年では、手術支援ロボットの導入や、病床機能の見直しなど、時代とともに多様化する医療ニーズに応えられる、病院づくりを進めています。
- 平成26年11月
-
510床から503床へ減床(一般481床、感染10床、人間ドック12味)
※一般許可病床に人間ドック12床を編入
- 平成27年4月
-
503床から483床へ減床(一般461床、感染10床、人間ドック12床)
- 平成27年4月
-
緩和ケア病棟の開設(20床)
- 平成27年9月
-
関東・東北豪雨災害 医療従事者を派遣
- 平成28年4月
-
地域包括ケア病棟の開設(46床)
- 平成28年4月
-
熊本地震 救護班派遣
- 平成28年7月
-
福島第一原子力発電所の事故における福島県浪江町の健康調査と健康支援活動の継続
- 平成28年9月
-
院内助産を開始
異常がない妊婦・医師が許可した妊婦対象に、妊産婦が主体となる出産を目指し、助産師が妊産婦に寄り添い、出産を一緒に行う。
- 平成30年9月
-
北海道胆振東部地震 救護班派遣
- 平成30年9月
-
産婦人科疾患に対するロボット支援下手術を導入
ダヴィンチサージカルシステムという手術支援ロボットを用いて腹腔鏡手術を行う。3次元画像を見ながら操作し、ロボットアームが連動してスムーズな手術が可能となる。
- 平成31年4月
-
訪問看護サービスを開始
退院前から看護師が訪問し、患者さんとご家族と一緒に自宅でのケア方法を検討。入退院に関わらず、継続的な介入が可能で急な退院にも対応。顔の見える連携を実現した。
- 平成31年4月
-
442床で運用(一般420床、感染10床、人間ドック12床)
病院機能評価3rdG Ver.2.0認定
- 令和元年9月
-
台風15号 救護班派遣
- 令和2年2月
-
新型コロナウイルスとの戦い
新型コロナウイルスの感染指定医療機関として帰国者接触者外来を設置
横浜に寄航したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号へDMAT隊員(医師)を派遣・同船関係者の受入れ開始。
秋田・石巻・福岡の各赤十字病院から医師と看護師の応援を受ける
人間ドックを閉鎖し20床を追加確保し、感染症病床10床と合わせて計30床体制で運用開始。その後、段階的に増床し42床から85床体制で運用。
- 令和2年4月
-
茨城県新型コロナウイルス感染症「重点医療機関」の指定を受ける
- 令和3年4月
-
アメニティ施設(薬局、保育園、コンビニ、理容室)を開設
- 令和3年7月
-
2020東京オリンピックに医療スタッフ参加
- 令和4年4月
-
HCU(高度治療室)の開設(4床)
- 令和5年6月
-
創立100周年
これからのビジョン
当院は、「地域に愛され、信頼される病院」を目指し、100年の歩みを進めてきました。これからも職員の資質向上に力を注ぎ、通常診療の充実に努めます。最新の医療機器を導入するなど、地域のニーズに合わせた治療を行うとともに、災害時に迅速な対応が取れる体制を常に整えていきます。さらに、他の医療機関との連携強化や行政との協力体制の整備を進め、引き続き水戸医療圏を支える中核病院として、役割を果たしていきます。
また、地域貢献の一環として、令和5年1月から茨城県のプロバスケットボールチームである「茨城ロボッツ」に選手のケアやリハビリを担当する理学療法士を派遣するなど、地域を活気のある場所にするための取り組みも行っています。次の100年に向けて、病院の枠にとどまらない活動にも、より一層力を注いでいきます。