ダ・ヴィンチ手術
当院では平成25年9月3日よりロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術手術を開始しました。
その後、平成28年4月より腎部分切除術、平成30年4月より胃切除術が保険適用となり、ロボット支援手術件数は年々増加傾向にあります。婦人科領域についても、令和元年7月より良性子宮疾患、同年9月からは子宮体がん手術が保険適応となりました。
ロボット支援手術の専門研修を修了した4名の医師(=術者:泌尿器腹腔鏡技術認定医1名、日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科)1名、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医2名)と、専任の看護師・臨床工学技士でチームを組み、万全の態勢で手術に臨んでいます。
2019年12月には、当院で実施したロボット支援手術件数が500件を達成。
2023年2月7日には、1,000件を達成しました。
ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ手術)の実績はこちら
当院で実施しているロボット支援手術について
当院では、以下の手術を保険診療で実施しています。
- 泌尿器科
腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術
腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術
腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術 - 外科
腹腔鏡下胃切除術
腹腔鏡下噴門側胃切除術
腹腔鏡下胃全摘術
腹腔鏡下直腸切除・切断術
→令和4年9月1日から当院でも保険診療で実施可能となりました。 - 婦人科
腹腔鏡下膣式子宮全摘術
腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)
腹腔鏡下仙骨膣固定術
<ロボット支援手術とは>
今までの一般的な手術は、①開創手術、②腹腔鏡下手術に分けられます。
開創手術(=直視下に直接体内に手を入れ臓器を取り出す手術)は傷が大きくなり、相応の痛みや整容性の問題がありました。それらを軽減する目的で腹腔鏡手術(=お腹にガス(二酸化炭素)を注入して膨らませた状態にし、手術操作は小さなトンネルを介してカメラや操作機器によりすべて体外から行う手術)は発展してきました。腹腔鏡手術により格段に傷は小さく痛みも軽減されましたが、機器の操作性と2次元の画面構成(立体視ができない)の問題から手術手技は一定の熟練を要していました。
そこで登場したのがロボット支援手術です。術者は手術コンソールからロボットを遠隔操作し、手術の実際は小さなトンネルを通して体内に挿入されたロボットアームが行います。ロボットアームは術者の手の様に繊細に動き、手術コンソールからは3次元の拡大画像で術野を観察できます。
つまりロボット支援手術により、従来の腹腔鏡手術のメリットに加え、円滑な操作性と良好な視認性を併せ持つ手術が可能となりました。
- ロボットアーム
- ロボットアームの動きの実際
手術コンソールは最新のデュアルコンソール(2台のコンソール)が採用され、適切な手術の進行が補助され、教育的にも有用とされています。
<前立腺がんにおけるロボット支援手術>
前立腺がんに対する前立腺摘除術も、従来は開創手術と腹腔鏡手術が行われていました。前立腺摘除術の最大の問題点は術後の尿失禁と性機能(勃起)障害で、従来の2つの手術方法ではその成績にあまり差がない状況でした。しかしロボット支援手術の最大のメリットである緻密な操作性と視認性から、術後尿失禁と勃起障害の改善が期待されています。また、断端陽性率(=がんの取り残しの可能性)の低下も示唆されています。既にアメリカなどでは前立腺がんの標準的手術方法であり、日本でも2013年に、他科に先んじて保健収載されたロボット支援手術となっています。
<ロボット支援前立腺摘出術の手術適応>
- 限局がん(早期がん)。
- 極端な前立腺肥大症(特に中葉肥大)がないこと。
- 腹部手術の既往(虫垂炎除く)がないこと。
- 体位(極端な頭低位)を踏まえ、症状の安定していない心臓・血管疾患、緑内障、呼吸器疾患がないこと。
※ 適応を含めた手術の詳細に関しましては、泌尿器科外来を受診して頂き、医師からの説明を受けてください。
<胃がんにおけるロボット支援手術>
当院では2016年3月に茨城県初となる、胃がんに対するロボット支援手術を導入し、実績を重ねてきました。2018年度の診療報酬改定で4月より新たに胃がんに対するロボット支援手術が保険適用となり、当院でも保険診療にてダ・ヴィンチ手術を提供することが可能となりました。
ダ・ヴィンチを用いたロボット支援手術は、現在一般的に普及している腹腔鏡下手術と比較し、出血量が少ない、術後合併症が少ないなどの利点が報告されています。
ロボット支援下胃切除術は、胃がんに対する知識、手術手技、腹腔鏡手術に精通していることが重要で、当院では日本内視鏡外科学会の技術認定医及び消化器外科学会専門医で、ロボット支援手術の専門研修を修了した者が執刀します。
ダ・ヴィンチを用いた手術のご希望や、詳しい説明をお聞きになりたい方は、当院外科外来へお問い合わせ下さい。 ※詳しい実績などは、こちらをご覧ください。
<婦人科領域におけるロボット支援手術>
2018年より症例実績を積み、2019年に保険診療での手術認定を受け、早期子宮体がんと子宮筋腫を初めとした良性子宮疾患について、手術を開始いたしました。安全な手術を患者さまに提供するため、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医がロボット支援手術の研修を受け執刀いたします。
詳しい説明や実績をお知りになりたい方は、当院婦人科外来へお問い合わせ下さい。
当院のロボット支援手術実績
(2022年1月末時点)
泌尿器科
術式 | 件数 | 集計期間 |
腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術 | 515 | 2013.9~2022.1 |
腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術 | 26 | 2017.7~2022.1 |
腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術 | 7 | 2021.8~2022.1 |
外科
(胃切除術内訳)
術式(*印は胃切除術として円グラフに反映) | 件数 | 集計期間 |
腹腔鏡下幽門側胃切除術* | 106 | 2016.3~2022.1 |
腹腔鏡下胃全摘術 | 17 | 2016.5~2022.1 |
腹腔鏡下噴門側胃切除術 | 30 | 2018.5~2022.1 |
腹腔鏡下幽門保存胃切除術* | 13 | 2017.1~2022.1 |
腹腔鏡下胃局所切除術* | 1 | 2021.6~2022.1 |
婦人科
術式 | 件数 | 集計期間 |
腹腔鏡下子宮全摘術 | 48 | 2018.9~2022.1 |
腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術 (子宮体がんに限る) |
52 | 2018.11~2022.1 |
腹腔鏡下仙骨膣固定術 | 19 | 2020.10~2022.1 |
レーザーでアザ治療
アザは治せるの?
アザの多くは皮膚疾患として良性であることが多く、大きく分けて以下の2種類に分けられます。
- 血管腫などの赤アザ
- メラニンが原因となる茶アザ、黒アザ
アザ治療はかつて手術療法が主流でしたが、10年ほど前からレーザー(人工の光)を用いた治療が良い成績をあげるようになりました。また本体は腫瘍ですから、長い年月のうちに徐々に大きくなり、美容的整容的に気になる方、悩む方も少なくありません。
レーザーを用いたアザ治療の利点
当院の形成外科では、レーザーを用いたアザ治療を常時行っています。
レーザー治療の利点は3つ。
- 正常皮膚にダメージを与えない
- 目標とする病変(血管やメラニン)を破壊
- 傷跡を残さない
当院の治療法
当院の治療対象
- 赤アザ
- 茶アザ、黒アザ
- 毛細血管拡張症(赤ら顔)や外傷による異物沈着症など
当院形成外科ではQスイッチルビーレーザーを導入しております
従来は、機器をレンタルし治療にあたっていましたが、現在では購入して本格的に治療しています。過去の期間限定時に、延べ180余名の患者さんを治療いたしましたが、太田母斑、老人性色素斑をはじめとする高い有効率(太田母斑100%、老人性色素班90%)を得ることができました。
Qスイッチルビーレーザーは、太田母斑や伊東母斑、異所性蒙古斑などの真皮内メラノーシスを始め、扁平母斑や老人性色素斑などの表皮内メラニン増殖性病変、さらに外傷性刺青などにも大変有効な治療機器です。他の色素性病変治療用レーザー(QスイッチYAGレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなど)に比べて、メラニンに対する選択性が最も高いのを特長としています。またQスイッチを付加することで、1億分の25秒という極めて短い時間に照射を行うことにより、 周囲健常組織に全くダメージを与えずにメラニンだけを破壊できることができます。瘢痕形成などの副作用は認められていません。
結石破砕装置
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、体外からの衝撃波で体内の結石を破壊する結石治療法です。本法の導入によりごく特殊な場合以外、開腹手術は今日では殆ど行われなくなりました。
シーメンス社製のリソスター・マルチラインという機種で、本機によるESWLとHo:YAGレーザーによる内視鏡的結石破砕術との併用により現在では、腎・尿管・膀胱など全結石がほぼ治療可能となりました。
入浴治療施設「家族風呂」
心まで元気になる場所であるために「病は気から」の言葉どおり、病気とストレスは密接な関係にあります。
当院では、入院される方に快適さを提供し、そうしたストレスを取り除いていただけるよう、充実した入浴施設もご用意しています。
難病特殊専門外来
内科・神経内科では、難病治療を重要視し、難病特殊専門外来を開いています。各外来では、内科的治療のみならず、リハビリテーション科への紹介や、特定疾患の認定及び身体障害者の認定の手続き等も症状に応じて行っています。
難病に指定されている特定疾患あるいは、治療が複雑かつ困難な疾患は、大きく「神経内科系疾患」 と「リウマチ膠原病系疾患」に分類されます。
神経内科系疾患
・多発性硬化症 ・パーキンソン病
・重症筋無力症 ・アミロイドーシス
・スモン ・後縦靱帯骨化症
・筋萎縮性側索硬化症 ・ハンチントン病
・脊髄小脳変性症 ・ウィリス動脈輪閉塞症
・シャイ・ドレーガー症候群などの特定疾患および
・筋ジストロフィー症など
神経内科系疾患の特殊専門外来の詳細はこちら。
リウマチ膠原病系疾患
・ベーチェット病 ・全身性エリテマトーデス
・サルコイドーシス ・強皮症
・皮膚筋炎及び多発性筋炎 ・結節性動脈周囲炎
・大動脈炎症候群 ・悪性関節リウマチ
・ウェゲナー肉芽腫症など
災害救護活動
当院は、茨城県基幹災害拠点病院に指定されており、県内で発生した非常災害時の被災者の受入れや日赤常備救護班の派遣体制を確立しています。
<基幹災害拠点病院>
災害拠点病院とは、大規模災害時において被災地内での迅速な医療活動の拠点になるもので、茨城県では18病院が指定されています。
当院はその中心となる基幹災害拠点病院に平成9年に茨城県から指定を受けました。そのため、病院機能を維持するために必要な全ての施設が耐震構造であり、ヘリポートや災害医療の研修に必要な研修室を整備しており、また、災害用医薬品や食料品を備蓄しています。
<日赤常備救護班>
日本赤十字社法では、日本赤十字社の目的を達成するために行うべき業務の一つとして、赤十字に関する諸条約に基づく業務とともに、
(第27条)
「非常災害時または伝染病流行時において、傷病、その他災やくを受けた者の救護」と定め、定款には、これら業務を遂行するための事業として、
(第48条)
「救護員を確保し、その養成訓練を行い、救護材料を準備するほか、救護に関する組織及び装備を整備すること」と定めています。
当院では、日赤常備救護班6班を編成し派遣体制を確立しています。
○班編成基準 計7名
班長:医師1名
班員:看護師長1名、看護師2名、主事2名、薬剤師1名
<DMAT>
DMATとは、Disaster Medical Assistance Teamの略で、「災害派遣医療チーム」と呼びます。
DMATは、医師、看護師、業務調整員(医師、看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。
DMATが発足した経緯は、平成7年に発生した阪神・淡路大震災で初期医療の遅れから、平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば救命できたと考えられる「避けられた災害死」が500名存在したと推定され、災害医療について多くの課題が浮き彫りとなり、この教訓を生かし、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら救護活動を並行し、災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになったからです。
当院では現在11名(医師2名、看護師6名、業務調整員3名)の隊員がおり、2チームを編成しています。
主な活動は、病院支援や広域医療搬送、現場活動などです。
<主な救護訓練・研修会>
当院では、茨城県基幹災害拠点病院としての役割を果たすため、また、救護活動に必要な技術と迅速な行動力を養うため、日本赤十字社や県及び関係機関が主催する様々な救護訓練や研修会に参加しています。
- 日赤常備救護班等災害救護訓練
- 日本赤十字社本社・第二ブロック支部災害救護訓練
- 大規模地震災害医療対応訓練
- 航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)訓練
- 茨城県市町村総合防災訓練
- 百里飛行場航空機事故対処総合訓練
- 関東ブロックDMAT訓練
- こころのケア研修会
- 全国赤十字救護班研修会 等
<当院救護班の派遣実績>
- 平成16年 10月 新潟県中越地震/4班派遣
- 平成19年 7月 新潟県中越沖地震/1班派遣
- 平成20年 6月 岩手・宮城内陸地震/1班派遣
- 平成20年 7月 岩手県沿岸北部地震/1班派遣
- 平成23年 3月 東日本大震災/8班派遣
- 平成27年 9月 関東・東北豪雨/3班派遣
- 平成28年 4月 熊本地震/2班派遣
- 平成30年 9月 北海道胆振東部地震/1班派遣
- 令和元年 10月 台風19号/2班派遣・こころのケア班派遣
<国際活動の派遣実績>
- 平成24年11月~平成25年3月 ウガンダ北部地区病院支援事業/医師1名派遣
第二消化器外科部長 捨田利 外茂夫